21話 ついに、秘密のベールを脱ごうとする閃光。


 21話 ついに、秘密のベールを脱ごうとする閃光。



『お見事。新たなる探究者たちよ。貴様らは最初の一歩を踏み出した』



 死にかけでボロボロになっているデク人形が、目をキランと光らせて、



『それでは、最後に、真理の迷宮が如何に過酷であるかを教えよう。とてつもなく優秀な貴様らでも、乗り越えられない困難があるという事を、その身に刻め』



 喋り終えると同時に、右の掌を三人に向け、



『  《ハンマーセッション・ランクA》  』



 魔法を唱えると、


『レーザーマジック詠唱中、発動まで60秒。カウントダウン。60、59、58……』


 その瞬間、二人は、ゾクリと背筋を凍らせる。


 魔力の奔流から、桁違いにヤバい攻撃がくると理解できた。

 見てみると、ファーストゴーレムの右手が妖しい輝きを放っている。


 その輝きに対し、センは、


(ああ……これは、今のあいつらだと、対処できないかな……将来的には、どうか知らんけど、今、あの攻撃を受けたら、確実に死ぬ……)


 それを理解すると、

 センは、


(ここか? ここでこいつらを守ることが条件か? ……いや、そんなヌルい条件では帰れねぇだろう。なんせ、俺の人生難易度は、いつだって、ナイトメアマストダイだからなぁ)


 などと言いながら、

 センは一歩前に踏み出した。


 そんなセンの腕を、

 ガシっとつかむ者がいた。


「おい、閃。ちょっと待て。何をする気だ?」


「ん? ちょいとヤバそうだから、最終決戦兵器である俺が、ついに、秘密のベールを脱ごうかなぁと思って」


「……村人じゃあ、肉壁にもなれないよ」


「肉壁をする気はねぇよ。俺は、ただ、教えてやるだけさ。俺がいかに、ハンパじゃないか」


 そんなセンの言葉に対し、

 才藤が、強烈な目で、


「……ダメだ。下がってろ」


 そう命令してきた。

 センは、

 『お前の命令を聞かなければいけない理由が、俺にはなさすぎる』

 と返そうかと思ったのだが、

 しかし、才藤の目を見たことで、

 その言葉を発する機会を見失う。


(……この目……既視感がある……これは……)


 その目は、危機的状況に陥った時の自分と同じ目だった。

 だから、じかに『見たこと』は少ない。

 だが、感じることはできる。


 才藤は、イカれた目のまま、

 センに対して、まっすぐに、


「俺がやる。だから、生命力をよこせ」


 さらに命じられて、センは、

 どうするか、コンマ数秒だけ悩んだ。

 が、


(……んー…………ま、いいか……もうちょっとだけ、様子を見てやろう)


 ――などと、

 センと才藤が話している間、


 ファーストゴーレムの怪しい輝きに対し、

 聖堂が、顔面を真っ青にして、


(分かる。……これは確実に死ぬ攻撃……ぐっ)


 華日の全身が冷や汗でびしょぬれになり、


(いやいやいや、詰んでんじゃん、なにこれ。ふざけんじゃないわよ)


 そんな、絶望している二人の後方から、




「二人とも、俺に生命力をよこせ」




 そんな声が響いた。


「さっさとよこせ。あと二十秒しかない」


「あ? ふざけんじゃないわよ。なんで、あたしが、名前も知らないあんたに生命力をやらなきゃいけないのよ」


「つい数分前に、しっかりと名前を添えた自己紹介をしたばかりなんだけど……まあ、それはいいや。単純な話だ。俺が盾になってやるから、生命力をよこせ」

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