20話 エグすぎる厨二力。


 20話 エグすぎる厨二力。


「なんか、すごい顔になっているが、大丈夫か?」


 そんなセンの問いかけに対し、

 才藤は、


「大丈夫じゃねぇよ。この状況で大丈夫なわけがねぇだろ」


 しごく当たり前のことを口にしてから、

 とつとつと、


「モブ男子高校生の精神力をナメるなよ。泣きわめきながら発狂していないことを全力で褒めてもらいたいくらいだ。つぅか、なんで、お前は、そんな冷静? 頭おかしいの? お前らも、あの女子連中と同じサイコパス?」


「ふざけるな。あんなイカれた女どもと俺を一緒にするな。俺は、いたって普通の男子高校生だ。どこにでもいる平均的なモブ。それが俺のデフォルトだ」


 最初に、大事なところを断言してから、


「俺は、お前らと違って、力がある。この身に宿している複数体のアウターゴッドが火を噴けば、あの程度のゴーレムぐらいは瞬殺できる」


「アウターゴッドって……ぇと……クトゥルフ?」


「そうだ。クトゥルフ神話における最高位の神格。最強の邪神。そんな化け物の力を鎧にして身にまとう能力を持っているのが、この俺だ。どうだ? すごかろう? サインやろうか?」


「いらんけど……つぅか、そんなことができるやつの、いったいどこが普通の男子高校生なんだ?」


 呆れ交じりにそう言ってから、

 心の中で、


(……やばいな……こいつ、特殊な厨二だ……勘弁してほしいぜ……痛々しくて見てられねぇ……)


 中学時代にガッツリと厨二を患っていた才藤にとって、

 センの痛々しさは、心の芯に突き刺さるものがある。



(――っっと、閃と話している間に、ゴーレム、瀕死じゃねぇか。ほんと、あいつらすげぇ強ぇ……って、ぁっ……)



 そこで気づく。

 というか、思い出す。


(うおぉおおおお、や、やべぇ! この速度はアカン!)


 才籐がセンのヤバさにひいている間に、

 女子二人は、ファーストゴーレムをサクっと追い込んでいた。


 しかし、それはマズい。


(こんなに早く追いつめちまうと、『無慈悲な洗礼』のイベントスイッチが起動しちまう!!)


 顔を青くしている才藤。


 その向こうで、

 才藤の顔色など意にも解さず、

 ――聖堂は、敵の攻撃をガードしながら、

 スタッフを構えてつぶやく。



「――《闇の罰・ランクE》――」



 魔法を使った瞬間、ファーストゴーレムの動きが目に見えて鈍くなる。

 対象を、数秒だけ『ドクロを取った時のボンバ〇マン』のようにする呪いの魔法。


 そんな彼女の魔法攻撃威をサポートするのが華日。


 両者とも、とにかく度胸とセンスの塊。


 二人は、危な気なく、

 ファーストゴーレムを鎮圧・無力化し、

 着実にダメージを与えていく。


 そんな『楽勝』を目の当たりにした才籐は、


(最悪だ……こいつら強すぎる。こりゃ、もう回避はできねぇ。くそったれ。有能すぎると発動してしまうワナなんざ設定するんじゃなかったぜ)


 ヘイトを集めないよう、無駄に洗練された無駄のない無駄な動きでウロチョロしながら、チャンスをうかがう。


 ――終わりが見えた所で、



『お見事。新たなる探究者たちよ。貴様らは最初の一歩を踏み出した』


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