19話 意味? 知らんよ。


 19話 意味? 知らんよ。


「俺の責任は、『何か問題が起きた時に辞任すること』ではなく、『何か問題が起きた時、適切に対処すること』だ。俺はこう見えて、そこそこ責任感が強い。やると決めたら、徹底的にやる。腐敗は完膚なきまでに排泄しろ」


 王は揺るがない。

 王は絶対に自分を見失わない。


「腐敗を完全になくすことは不可能だ。そんなことは知っている。俺は賢くないがバカじゃない。腐敗の種は、世界中のいたるところに転がっている。だからと言って諦めるのではなく、死ぬまで抗い続けろ。それが、俺が下す唯一の命令だ」


 過剰な無茶で世界を縛り上げる。

 王の理想はあまりにも高い。


「気づかなかった・知らなかったという言い訳は許さない。どんな小さなことであろうと、隠ぺいしたヤツは殺す。ヒューマンミスは許すが、ただの悪意は絶対に許さねぇ。わかったか? わかったなら、返事はいらないから、さっそく行動にうつせ」


 絶対に折れないまっすぐな光。

 そんな後光を背負ったことで、300人委員会は輝きだす。


 『求められる仕事量』がエゲつない『スーパーブラック企業』になったが、

 しかし、所属している者の顔は幸福感で満ちていた。


 300人委員会の幹部にまで上り詰めるような者は、すでに、贅には飽きている。

 彼らは、みな、『本当に自分を満たしてくれるもの』を求めていた。


 センという後光を得たことで、彼らは、

 『本当に欲しかったもの』を理解した。



 ――まあ、だからこそ、『センに最も近い場所であるナンバーツーのポジション』を求めて争いが起こったりもしたのだが、しかし、それも、『ドロドロの過剰な足のひっぱりあい』になることはなかった。

 もちろん、センが、それを望まないから。


「競争するのはいい。ただし、事は全てエレガントに運べ」


 命じられたからといって、感情を制御できるわけではないので、暴走する者もたまにはいたが、しかし、その手の連中を、センは容赦なく排斥した。


 その者が、どれだけ優秀であろうが関係ない。

 センエースは、醜さを絶対に許さない。


 その『絶対にブレない姿勢』に、

 為政者たちは陶酔していく。


 金や地位や権力を得た者は、

 たいてい、ゆがんでいってしまう。

 ――その事実を、為政者たちは知っている。


 『力』の魔力を知っていれば知っているほど、

 センエースの高潔さに対して畏怖を抱く。


 とても同じ人間とは思えない。

 それが、為政者たちが抱くセンエースに対する感想。



 ――センをトップとする組織に、

 300人委員会は、新しい名前を求めた。

 それは、『これまでとは違う意志を持つ』という決意の表明でもある。


 名前を求められたセンは、


「知らんがな。勝手に決めろよ」


 と答えたが、しかし、

 配下たちは引き下がらなかった。


 センが決めることに意味がある、

 とゴリ押しされて、仕方なく、


「なんでもいいの? じゃあ……ゼノリカで。意味? 知らんよ。特に無いんじゃない?」


 異世界で見つけたスーパーブラック企業の名前を口にした。

 理由はとくにない。

 ただ、なんとなく、かぶせてみたくなっただけ。

 それ以上の理由はない。

 それは間違いなく事実だった。

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