20話 ゼノリカという苛烈な世界政府。
20話 ゼノリカという苛烈な世界政府。
「なんでもいいの? じゃあ……ゼノリカで。意味? 知らんよ。特に無いんじゃない?」
実際、意味などなかった。
それは間違いなく事実だった。
しかし、その『無意味な言葉』を、ゾーヤはひどく喜んだ。
他の配下からの受けも上々だった。
セン自身も、なんとなく、
ゼノリカという言葉を気に入っていた。
なぜかは分からない。
いつだってそう。
ゼノリカと名前を変えたことで、
組織の質が明らかに変わった。
『体制の枠組み自体』は、もちろん同じなのだが、
意識の方向性が大幅に変動した。
300人委員会の段階で、
とんでもない権力を持つ組織であったが、
ゼノリカになったことで、
その権勢はますます苛烈になっていった。
そうなってくると、増長したバカが増えてくる、
というのが世の常なのだが、
センは、沸いてくるバカを徹底的に排斥した。
「権力に酔うバカは信用しない。優秀かどうかはどうでもいい。というか、優秀であればあるほどヤバい。というわけで、クビだ」
センは、ゼノリカに所属する幹部に対して、
過剰なほどの『倫理観』を求めた。
その厳しすぎる姿勢に対して非難の声をあげる者もちらほらいたが、
「イヤならやめればいい。俺は、別に独りでもいい。俺は独りになっても何も困らない。というか、できれば、独りになりたい。というわけで、やめたければ、すぐにやめろ。というか、できるだけ、やめてください、お願いします」
ワガママを通せるだけの力を持つ。
それがセンエースのカリスマ。
センはとことんワガママに、組織をいじくっていく。
『実際の運営としてどうか』という点は、ゾーヤが必死になって調節するので、問題が起きることはない。
センの横暴を、ゾーヤは全力でバックアップする。
センのワガママを、ゾーヤは、むしろ、喜んだ。
センが奔放であればあるほど、ゾーヤの肌艶はピカピカになっていく。
彼女の優秀さが、センの無謀を支えている。
センエースに、政治主導や組織運営の才能は皆無。
しかし、そんなものは必要なかった。
王に求められるのは『象徴』としての役割のみであって、
必要な『業務』は、『優秀な配下』がやればいい。
センにはセンにしか出来ない仕事がある。
それは、どれだけ優秀であろうと代替えできない最重要責務。
『この上なく尊き王で在り続ける事』。
その職務さえ果たしてくれれば、他は何もできなくてもいい。
どれだけルックスがお粗末でもいい。
どれだけみっともなくともいい。
どれだけバカでもいい。
『センエースがセンエースで在り続けてくれる』のであれば、
ゼノリカは、それ以外を彼に求めることはない。
――センエースは、
わざわざ、誰かに求められなくとも、
センエースであり続ける。
というか、仮に、
世界中の人間が、センエースに、対し、
『センエースであることをやめる』ように求めたとしても、
センエースは、決して、その望みを受け入れない。
センエースは、絶対に、センエースで在り続ける。
どんな巨悪を前にしようと、
どんな面倒を前にしようと、
どんな腐敗を前にしようと、
センエースは、センエースであり続けた。
全人類の絶対的精神的支柱で在り続けた。
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