8話 夜のドキドキデート。
8話 夜のドキドキデート。
その日の夜、
どうしようか迷ったものの、
一応、センは、約束通り、
夜の8時に、時空ヶ丘学園の正門へと向かった。
(おっ……ちゃんといた。『呼び出しておいて忘れる』という『攻めたボケ』が待っている可能性に震えていたが……案外、普通に来ているじゃねぇか)
正門前で、壁にもたれかかって、スマホをいじっているツミカの姿を発見し、
センは、ホっとしつつ、少しだけ歩くペースを上げる。
駆け足では無いものの、
歩幅は確実に長くなっている。
残りの距離が30メートルくらいになったところで、
近づいてくるセンの姿に気づいたツミカが、
センの方に手を振りながら、
「センセー、お待たせぇ、待ったぁ?」
などと、鋭角な言葉を投げかけてくる。
「待っていたのはお前だ」
軽い言葉で薙ぎ払ってから、
「いない可能性の方が高いと思っていたが、まさか、先に待っているとは思わなかった」
「センセーとのデートに遅刻とかありえないにゃ。なんせ、ツミカさんは、センセーと、デートするのが、長年の夢だったんだから」
「……お前が、俺の存在を認識したのは、昨日の朝だと思うんだが……まあ、いいや、別に」
「それは大きな間違いだにゃ」
「ほう。どの辺が?」
「ツミカさんが、センセーの存在を認識したのは、昨日の夜からだにゃ。朝の段階だと、『背景のシミ』ぐらいにしか思っていなかったにゃ。ここは、大事なところなので、間違えないでほしいにゃ。ぷんぷん」
「……そら、申し訳のーございましたなぁ」
不快感MAXでそう吐き捨てるセンに、
「じゃあ、そろそろ、デートをはじめるにゃ」
そう言いながら、
ツミカは、正門横の小さな扉をガチャっと開けて、
鼻歌まじりに、中へと入っていく。
「……ちょちょっ……お嬢様、どちらへ?」
慌てるセンをシカトして、
ツミカは、
「まずは、校舎まわりをブラっとするにゃ。そのあとで、体育館まわりをブラっとして、次に、グラウンドまわりをブラっとするにゃ。いやぁ、楽しみだにゃぁ。夜の学校巡りデート」
「……」
「昼間と違って、夜の学校は、静かでいいにゃぁ」
などとほざいているツミカの背中を見つめながら、
センは、
(……ま、慌ててみせたものの、実際のところは、あるていど、予想がついていたけどな……)
心の中で、
(何がしたいのか、詳細は不明だが……『探り』を入れてきているのは間違いない)
センの頭はハッピーセットではないので、
もちろん、『茶柱罪華が閃壱番に恋をしている』などとは思っちゃいない。
(茶柱罪華……お前からは、なんとなく、『ドロっとした闇』みたいなのを感じる……その、ハジけた仮面の下に、黒い塊が見え隠れしている……ただの勘違いかもしれないが、もし、俺の勘が当たっていた場合、お前はなんか……危険な気がする。何がどうとは言えんけど……)
茶柱罪華の『内情』に関して、何か確信があるわけではない。
すべては『感覚』の話。
『そんな気がする』というレベル以下に収まる、
『雰囲気』の話でしかない。
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