52話 天才というより変態。
52話 天才というより変態。
(ワシ自身の情報にアクセス。もし、何か、宝物が見つかったら、鍵を作成して開錠。そのまま、ロイガーを撃退してハッピーエンド)
決断するや否や、眼前にエアウインドウを顕現させる。
『F‐クリエイション』に全神経をぶち込むトウシ。
集中力を極限まで高めた上で、
『自分の中の宝探し』に熱中する。
(ヒトゲノムは30億の塩基対。その中で、たんぱく質になるエキソン領域は、たった2パーセント。その以外の領域は、遺伝子間領域と反復配列。ヒトゲノムの10%を占めるAlu配列は、かなり特異的な反復配列で、Alu配列がプロモーター領域に挿入されると、付近の遺伝子がバグって、病気になることから、おそらく、ただのジャンクDNAではないが、明確なシステムは、今のところ不明)
人間は、まだ、人間を知らない。
(ワシの中に、ワシの想像を超える何かがある可能性はゼロやない!)
解析プログラムを作成して投入。
自身の奥深くへと潜っていく。
処理しきれない問題が発生すればすぐに修正パッチをあてる。
『田中トウシ』という概念を丸裸にしようと、
トウシは、頭が爆発するほど必死になって没頭。
そんな、トウシの行動に対し、
ロイガーは、
「目の前の脅威である私を無視して、研究に没頭するとは……すさまじいバカだな。並外れた度胸と言ってもいいかもしれないが……いや、やはり、ただのバカだな」
そう言いながら、
右手を、トウシに向けて、
「異次元砲」
凶悪な照射を放った。
トウシの存在そのものを消し去るような威力ではない。
片腕を吹っ飛ばす程度の照射。
「ぐぁああっ!」
右腕を吹っ飛ばされたトウシは、バランスを崩して、倒れそうになるが、
なんとか踏みとどまる。
「次は左腕だ。ダルマになるまで続けるぞ」
激痛の中で、
しかし、トウシの没頭は止まらない。
どんな状況に陥ろうと、
トウシは、自分の中へと潜り続ける。
(まだ時間が足りん……っ。これ以上のダメージを受けると、おそらく、集中力が阻害される……どうにか、ロイガーの攻撃に対応せな……完璧な対応は必要ない……時間さえ稼げればそれでええ……)
人間を解析する速度が跳ね上がる。
極限状態で加速する集中力。
そんな中で、トウシは、一つの可能性を見つけた。
(……同じ波形の異次元砲なら、かきけせる……人には、それができるだけの可能性がある……)
頭の中を、異次元砲という概念だけで埋め尽くす。
(ロイガーの異次元砲は完全無属性。核振動の流れは一定で淀みがない。一点集中のオーラを合わせて相殺させることは……理論上不可能ではない。ただ、量子論的な超低確率……パーフェクトな演算を必要とする……つまり……これは、ワシにしか出来ん不可能!!)
頭の中を二つにわける。
一つは、自分に没頭するための領域で、
一つは、ロイガーの異次元砲を分解するための領域。
一つだけでも、脳を酷使する思考を、同時に展開。
天才というより変態だった。
常識的に理解できる範疇から抜けている。
「――異次元砲」
ロイガーが放った異次元砲は、正確に、トウシの腕を狙いすましている。
本来であれば、その恐怖におびえるのが普通。
だが、トウシは、
「……見えたっ……消えろぉおおおおっ!!」
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