8話 あんな終わってそうなやつとか、いたっけ?
8話 あんな終わってそうなやつとか、いたっけ?
(この才藤とかいうクソ陰キャ、目つきが終わってんなぁ……)
(なんか、隣のクソ陰キャに睨まれてんな……なんでだ? つぅか、興味ゼロだったから、今まで気づかなかったけど、こいつ、目つきが終わってんなぁ……)
――そんな風に、
互いが互いのことを『やべぇヤツ認定』している最中のこと。
一人の女子がガタっと音をたてながら乱暴に立ち上がり、
ジョーズのBGMが聞こえてきそうな足音を纏って、
才藤の背後に近づくと、
彼の右耳を掴んで、グイっと横にひっぱる。
「いたっ……はぁ?」
イラつきを前面に押し出した顔で、背後にいる女子を睨む才藤。
そんな彼に、背後にいる女子は、鬼の形相で、
「なぜ、また、私の家を睨みつけている?」
「……だから、見ていないと、何度も言わせんなよ」
終始鬼の形相を保ち続けている彼女、
――『聖堂 雅(せいどう みやび)』は、
さらに、語気と顔面の画力を上げて、
「貴様は本当に不愉快な男だ……」
キューティクルを平伏させた、超ロングのツヤッツヤな黒髪。
股下百センチのクソ長い脚を包む、自己防衛本能の象徴とも言うべき210デニールの真黒なパンスト。
新雪を嫉妬させる白皙と、黒に統一された衣服と黒髪超ロングヘアの過剰すぎるコントラストが特徴的な、『日本人離れ』の類義語に分類してもいい、九頭身のメンヘラ鬼女。
そんな彼女に対し、
周りの男子連中は、
普通に、
『とんでもない美少女』という認識を持っているのだが、
しかし、同時に、
『かなりヤベぇメンヘラ』という認識をしている者も少なくない。
ちなみに、『センは』と言うと、
(……やべぇな、この女……パーフェクトなサイコの目をしている……)
もちろん、センも、
『彼女の外見』に対しては『みごとな美形だ』と思うのだが、
しかし、彼女の性格は、さすがに許容できる範囲ではなかった。
普通に『かかわらないようにしよう』と決意し、
全身全霊で『存在感』と『息』を殺して、
『誰の意識にも残らない理想のモブ』に徹しようとしているセン。
――だが、
「……ん?」
聖堂は、何か、不穏な空気でも感じ取ったかのように、
才藤から視線をはずして、センをにらみつける。
「……んん?」
小さく首をかしげて、
才藤とセンを交互に見てから、
才藤の背中をドンと殴る。
「だから、いたいって――」
と、文句を言おうとする才藤に、
聖堂は、小声で、
「隣にいるの、誰? いた? あんなの」
その問いかけに対し、
才藤は、また、やばいやつを見る目を向けて、
「いや、いたよ。確か、閃ってやつだ。下の名前までは、もちろん、憶えとらんけど、一応、クラスメイトだ。……たぶん。いや、俺も、もちろん、話したことはないから、詳しくは知らんけど、いたのは憶えている……憶えている……よな……うん……あれ? いや、うん、いたいた……いたよな……名字は憶えているんだから、そりゃ、いたよな……」
正直言って、この二人(聖堂と才藤)は、クラスメイトに興味がない。
『悪目立ちしているウサいやつ』の名前は、
防衛本能で憶えているが、
しかし、『静寂無害な地味モブ』の名前を正確に憶えるほど、
この二人は、常識ある人間ではない。
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