63話 何よりも強い呪い。


 63話 何よりも強い呪い。


「センエースよぉ! いいザマじゃないか! 散々、頑張ってきて、その結果が、無間地獄行き! ほんと、最高の人生じゃないか、なあ、センエースっ!」


「ああ、そうだな」


「あの女どもから、お前の記憶がそがれていくのも感じる! あいつらは、忘れるぞ! 完全に! これまでのように、『永遠の1パーセント』を残したりはしない! センエースの全てを完璧に忘れる! 全てが終わった時、お前に関することは何も残らない! お前ひとりだけが! ただ、永劫の地獄の底でもがき、苦しみ続ける! 不幸だな! これ以上のバッドエンドはない!」


「ああ、そうだな」


「泣いていいぞ、センエース! 見届けてやるよ!」


「……涙はもう枯れた」


 そう言い捨ててから、

 センは、拳に『これまでの全部』を込めた。


「ずっと、共に、歩んでくれた、俺の拳……いつだって、側にいてくれた…………ありがとう」


 最後に、感謝も込めてから、

 センは、


「――閃拳――」


 オメガの中心に向かって、

 まっすぐに、拳を突き出した。


 これまでの全部が込められている拳。

 その重さは当然破格。


「ぐふぅうっ……っ!!」


 ぶち込まれて吐血。

 オメガは、軽く白目をむいた。

 一瞬だけクラクラしたものの、

 どうにか、意識は保ち、


「特殊な絶死が込められた拳……見事だ。褒めてやる。認めてやるよ。センエース。お前は……俺が本気を出すに値する化け物だ」


「……ほん……き? ……え?」


「瞠目しろよ。魅せてやるから、まばたきするな」


 そう言ってから、

 オメガは天を仰ぎ、

 中心にオーラを集めて、




           |

           :

         〈* *〉

        [*****]

    [* * * * * * *]

「――/\**【【究極超神化7】】**/\――」

    [* * * * * * *]

        [*****]

         〈* *〉

           :

           |






 パーフェクトコールの覚醒技を行使。


 オメガの全部が美しく膨れ上がった。

 その尊い姿を目の当たりにして、

 センは、


「…………ぃや……ぇえ……」


 ただただ絶望した。

 『素の状態のオメガ』と『ギリ互角』だったセン。


 その上に、究極超神化7を積まれたら、さすがに詰み。


「センエース。お前は、多くを積んできた。数字ももちろんだが、数字だけではない強さも、全部を失う覚悟も。未来も、孤独も、希望も、全てを飲み込んで、限界を超えて、何度も、何度も、何度も覚醒して、運命を切り開いて、地獄を飲み込んで……そうやって、今日という日にたどり着いた。しかし、そんなお前を、俺は置き去りにしている。さあ、その現実を前にして、お前は、どうする? お前の答えを魅せてくれ」


「……」


 押し黙ったセン。

 見つめる先には、輝くオメガ。


 センは、数秒、黙ってから、


「すぅ……」


 息を吸って、


「はぁ……」


 ゆっくりと吐いた。

 頭の中がぐちゃぐちゃになる。

 恐怖と絶望でパンパンになっている。

 体が芯から崩れていきそうな感覚。

 このまま消えてなくなりたいという欲望で一杯になる。

 けど、

 でも、

 しかし、




「それでも……叫び続ける勇気を……」




 ――『その言葉』は、いつだって、この上なく強い呪い。

 へたり込むことを、死んでも許さない縛り。


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