84話 天下無敵の合体主人公。


 84話 天下無敵の合体主人公。


「合体というのは、組体操でいうところの、逆ピラミッドみたいなもの。『一番下(土台)』を担えるのは、相当の根性持ちだけ。つまり、お前だけの特等席」


「……逆ピラミッドって……ちょっとイメージしてみたんだけど、それ、大丈夫? 完全に、イジメられてない?」


 などと、

 文句をいいつつ、

 センは、


「……ところで、合体って、どうやればできるんだ? なんとなく、それが可能であることは分かるんだが、具体的な方法は一切知らんのだが」


 そう問いかけると、

 ソンキーは、タメ息を一つはさんで、


 センの胸部に右手をあてて、


「――『アマルガメーション』――」


 そう宣言すると、

 ソンキーの肉体が粒子化して、

 センの中へと注ぎ込まれていく。


「お、おぉお……合体って、思ったより簡単だな……俺、てっきり、ここから、フュージョ○ポーズの練習でもするのかと思って、内心、ちょっとビクビクしていたんだが」


 魂魄が膨れ上がっていくのを感じる。

 凶悪に膨れ上がる。


 最強に最強を掛け合わせた究極。


 たどり着いた修羅の最果て。


 合体が完了した時、

 そこには、圧倒的な存在感を放つ化け物が独り。




「……よっしゃぁ!」




 歓喜の雄たけびを上げてから、


「センエースとソンキーが合体して、センキーってとこかな」


 と、様式美のテンプレを挟み、


「ついに、俺が完成した! 俺こそが! 過去も未来もふくめ、並ぶ者のいない、真なる最強!」


 そう叫びながら、

 グっと拳を握りしめ、


「そんな俺様に逆らったことを後悔しながら、あの世にいくがいい! 俺が! 俺達が、ガン〇ムだ!!」


 意気揚々と、

 ヨグに殴り掛かったセンキーさん。


 確かに速かった。

 確かに力強かった。


 その数値は、それまでのセンとソンキーを大幅に超えていた。

 質量は間違いなくハイスペック。

 数値だけは、確かに最強。


 けれど、


「……あれー?」


 数秒ほど、ヨグと殴り合った所で、

 センキーは違和感を覚えて、その場で停止し、


「……俺、なんか、思ったより強くない……というか……むしろ……弱くない? 弱いというか、なんというか……単純に、死ぬほど動きづらい……」


 と、自問自答。


 そんなセンキーの疑問に対し、

 ヨグが冷めた視線を向けて、


「合体したのだから、当然、戦闘力は下がるだろう」


「……えー……そうなの?」


「なにを当たり前のことを。性質の異なる二つの魂魄を強制的に一つにしたのだから、各所にズレが生じて歪むに決まっている」


「……えー……じゃ、意味ないじゃん……」


「そんなことを私に言われても困るな」


 そこで、センキーは、

 自分の中に向かって、


「え、どうしよう。意味ないっぽいし……解除する?」


 そう問いかけると、

 センキーの中のソンキーの部分が、


(アホか、ボケ。解除したところで勝ち目はない。ただの2対1では可能性すらない)


「つっても、この戦闘力だと話にならないぞ。まるで、格ゲーのキーコンフィングがバラバラになったような違和感……ぶっちゃけ、これだったら、俺一人で、何かしらの覚醒を待った方がマシな気がする……ま、現状の俺だと、追加覚醒出来るかどうか微妙だけど」

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