83話 逆ピラミッド。
83話 逆ピラミッド。
「じゃあ、ソンキー。あとは任せたぞ。俺は風呂に入ってくる」
「なんのために苦労して、お前を召喚したと思っている。俺の手足として、馬車馬のように働け」
と、ソンキーが、ボソっと、
「2対1で闘っても勝てはしない。ヨグ=ソトースは、俺達よりも遥か上にいる」
「言われんでも分かっとるわい。くそみそ癪だが、だいぶ尖ったムーブメントをかまさんと、この危機的状況は突破できねぇ」
「その通りだ。まともではない覚悟を払う必要がある」
「常軌を逸したスペシャルなムーブ。作風的に、この状況なら、もはや、一つしかない。そうだろう?」
「ああ。俺もそう思っていた」
「というわけで」
「というわけで」
「てめぇを、俺の強化パーツにしてやる。ありがたく思え」
「きさまを、俺の強化パーツにしてやる。ありがたく思え」
「あん?」
「おん?」
噛み合わないながらも、
驚くほど重なり合う二人。
そんな様子を、
ヨグは黙って見ていた。
「イチャついていないで、さっさと合体したらどうだ? やりたいんだろう? 邪魔しないでやるから、はやくしろ」
「おい、気色の悪い表現はやめろ。美少女相手ならともかく、なんで、こんなゴリゴリの脳筋相手に……うえぇ……ダメだ……あまりのおぞましさに、中枢が拒絶している……ソンキー……俺はもうダメだ……あとは、たのんだ……っ」
「だから逃げようとするのをやめろ。お前は、諦めることを諦めたヒーローだろうが。なぜ、今回に限っては、そんなにも及び腰なんだ」
その理由はたった一つ。
頼れる相手がいるから。
誰にも頼れない状態であれば、
へし折れるほどに奥歯をかみしめて、
これでもか、と、でかい背中を世界に魅せつけ続けるヒーローだが、
『田中トウシ×ソンキー・ウルギ・アース』という、
センの視点では、この世で他に並ぶものがいない、
『あまりにも頼りになりすぎる存在』がいることで、
『母親に対してだけはイキる厨坊』のように、
『見事な内弁慶っぷり』を発揮している、
という、とんでもなくダサい男。
――それが、舞い散る閃光センエース。
と、そこで、ヨグが、
「――センエース。貴様の無様さは既に見飽きている。そろそろ、少しはマシなところを見せてくれ」
そんな、遥かなる高みからの言葉を受けて、
センは、普通にイラっとした顔で、
「……どんだけ上から言葉を投げつけてきやがる。自分がちょっと強いと思って、ナメくさりやがって。後悔の仕方を教えてやるよ」
そう宣言してから、
センは、ソンキーを睨みつけ、
「……仕方ないから、ここは俺が折れてやる。ソンキー、涙を呑んで、お前の強化パーツになってやるから、負けるんじゃねぇぞ」
「俺に押し付けようとするな、センエース。お前が主体で、俺がサブだ。もし負けたら、責任は全てとってもらう」
「……いや、さっきは、お前、俺に強化パーツやれって……」
「ただの売り言葉に買い言葉だ。ベースを担うのは根性指数が高いヤツの方がいい。合体というのは、組体操でいうところの、逆ピラミッドみたいなもの。『一番下(土台)』を担えるのは、相当の根性持ちだけ。つまり、お前だけの特等席」
「……逆ピラミッドって……ちょっとイメージしてみたんだけど、それ、大丈夫? 完全に、イジメられてない?」
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