・エピローグ 『夢か……』

 ・エピローグ 『夢か……』



「……はっ……夢か……」


 自室で目を覚ましたセンは、

 ゆっくりと上半身を起こしながら、


「いやぁ、そうだよなぁ……夢だよなぁ……全部、夢だったんだ……俺は、ただの凡人で、怪物を殺せる力なんかないんだ……あー、良かった、よかった」


 などとつぶやきつつ、

 何気なく、スマホのスリープを解除すると、


「……あん?」


 知らない番号からの留守番電話が一件。


「……聞きたくないなぁ……」


 そうつぶやきつつ、

 録音されたメッセージに耳をかたむけると、


「話があるから、今日、学校はじまる前に、第ゼロ校舎にきてほしいにゃぁ」


「……やだなぁ……」


 心底からダルそうな声を出しつつ、

 センはベッドから降りて、

 凝り固まった肩を回した。



 ★



 相手がクラスメイトである以上、

 シカトを決め込んだところで意味はない。

 となれば、無駄に刺激しないよう、

 ある程度は、相手の要求に従っておく方が合理的。


 ――などとごちゃごちゃ考えつつ、

 指定された場所に向かったセンを待っていたのは、

 当然、K5の面々。


 彼女たちは、第ゼロ校舎の最上階で、

 高価な円卓に腰を落として、

 センを待ち構えていた。


「……おはようございます」


 とりあえず、朝の挨拶から入ったセンに、

 紅院が、


「好きなところに座って。……本当なら、玉座か、最低でも上座に座ってもらいたいところだけど、あなたはそれを望まないでしょう?」


「だんだん俺を理解してきたようだな。しかし、まだまだ足りない。まず、この俺を『呼びだす』という行為はナンセンスきわまる。今後、俺に何か言いたいことがある時は、『箇条書きのメール』で用件を伝えてくれ。返事はしないが、確認はしているから、それで満足してくれるとありがたい」


 などと、己の孤高力を全開にしつつ、

 センは、テキトーな席に腰を掛け、


「それで? 話とは? 個人的には『絶縁宣言』あたりが嬉しいところなんだが」


 などと供述しているセンに、

 まず、茶柱が、


「まず、最初に言いたいことは、『だれかれ構わず口説き散らかす』のはやめてもらいたいってことだにゃあ」


「……おい、誰か通訳してくれ。俺は、茶柱語が苦手でな。基本的に、そこのバカが何言っているか、さっぱり分かんねぇんだ」


 そこで、茶柱の専門家であるトコが、


「彼女は『だれかれ構わず口説き散らかすのはやめてもらいたい』と言うとる」


 と、丁寧に、茶柱語を和訳した。

 その結果、センは、遠い目をして、


「嫌味の一つも通らないこんな世の中じゃ……ポイズン」


 などと、全力で意味不明な言葉をつぶやくばかり。


「ミレーに対して、あんたが何をしたかは、すでに、ここにおる全員が知っとる。あんたがミレーにしたことは、口説くとか、口説かんとか、そういう領域の話やない。ほとんど異次元のプロポーズや」


「……異次元のプロポーズ……コナン映画のタイトルになりそうなワードだな(笑)」


「わろとる場合ちゃうやろ、ぼけぇ! このクソナンパ男がぁ!」


「なんでブチギレてんだよ。情緒、どうした?」

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