105話 主役たちの怒号。


 105話 主役たちの怒号。


 ――オメガバスティオン化された化け物の過剰な強さを正式に理解したセン。

 そこからのセンは、また、ひたすらに繰り返した。

 銀の鍵を使い、

 黒木に電話をして、

 ロイガーを殺し、

 ウムルを殺し、

 ツァール&イグを殺し、

 テロリストに首トーンして、

 武道会でエースガールズと戯れ、

 オメガタワーでナゾナゾとしゃれ込み、

 余った時間の全てを探索に費やし、

 また、銀の鍵を使う。


 そんな作業を、

 延々にくりかえした。


 『経験値』と『アイテム』をひたすらに、回収し続ける日々。

 少しずつだが、間違いなく強くなっていく。

 その流れは、センの好むところ。

 それは間違いないが、


「……うぉお……しんどいぃ……」


 回数が尋常ではないので、

 さすがに、楽しいという感情は一切ない。

 ただただ苦痛の無間地獄。


 延々に終わらない地獄の底で、

 センは必死にもがき続けた。


 そして、たどりついた、9521回目のループ。

 ついに、センのループ物語は、合計200年に達した。




 ★




 ――そんなセンの様子を、

 『ここではないどこか』で、

 ずっと見守り続けていた変態たちがいる。


 彼らの中の一人、

 マザコン熾天使が、




「さてと……んー、じゃあ、まあ……はじめようか……」




 そう言いながら、

 手首に巻かれたロザリオを握りしめ、


「――デビルメアトランク・セラフレア/トロイメロイ、起動」


 背中に、剣の翼を顕現させる。

 凶悪なオーラを放っている剣。

 覚悟の証が刻まれた翼。



「俺たちにとっては『最も大事な戦争』の開戦だ……気合い入れていくぜ」



 その号令に呼応するように、




「「「「「「「~「「「「「「「「「「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっ!!!」」」」」」」~」」」」」」」」」」




 彼の背後にいる超人たちが、一斉に、気合を叫んだ。


 一人一人が、主役級の化け物であるため、叫ばれた気合は地鳴りのように、この時空の全てを揺らした。



 ――そんな彼らの前にいるのは、

 影のような、龍のような、悪魔のような、

 あまりにも奇妙な虹色の闇。


 激烈なオーラを放っているその虹色は、

 目の前に並ぶ『かつての主人公たち』を見つめながら、






「いつみても、壮観だな」






 厳かに、そうつぶやいてから、

 バチバチと腹の底に響くようなオーラを集め、


「届くかどうか不明な、存在するか否かも定かではない『未来』のために、必死になって抗う虫けらども……貴様らは美しい」


 そう言ってから、

 どんどんと、分裂していく。

 2体に増え、4体に増え、8体に増え、16、32、64、


 最終的には128体にまで増殖。


 その全てが、奇妙な闇そのもの。

 虹色に瞬く美しい怪物。


 そんな怪物に、

 マザコン熾天使が、


「お前のことは、もう、ここにいる全員、100%ご存じ極まりないが、一応、礼儀というか、絶対必須な様式美として聞いておく」


 そう前をおいていから、

 まっすぐな目で、虹色を睨みつけ、


「てめぇは誰だ?」


 その礼儀正しい質問に対し、

 虹色も、目一杯のマナーで応える。



「私は、アウターゴッドの頂点。混沌を支配する神。全にして一、一にして全なる者。つまりは真理の具現。神々の頂点、虚空の王が刻んだ記憶。プライマルメモリ・ヨグ=ソトースである」

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