82話 『センエース』VS『クズニートの主』


 82話 『センエース』VS『クズニートの主』


 センは、決断すると、

 魔法で、簡易な仮面を作り出し、

 顔面に装着してから、


「……こんにちは」


 彼女の前に姿を現した。


 ――突然あらわれた仮面男の姿を見て、

 『この世界の主』は、一瞬だけ、

 全身で、驚きを表現したが、

 すぐに、冷静さを取り戻して、



「……あなたは?」



 探るように、そう問いかけてくる。

 センは、コホンとセキをはさんでから、


「人は俺をノゾ=キマと呼ぶ」


「……では、キマさんと御呼びしても? それとも、ノゾさんの方で御呼びした方がいいのかしら? ごめんなさいね。どっちがファミリーネームか分からないものだから」


「……どっちでもいいよ。どうせ、偽名だ」


「あら、そう」


 そう言いながら、

 『主』は腰を上げて、

 センをシッカリと観察すると、


「……随分と特殊な力をもっているようね。あなたが何者なのか、教えてもらえると非常にありがたいのだけれど?」


「俺も俺自身を理解していないから、説明は不可能。俺に関しては、常に最低を想像しろ。俺は必ず、そのナナメ下をいく」


「ふぅん……それは困ったわね」


 たんたんと、冷静に会話をしている中で、

 『主』は、ジットリと、センの腹をさぐっている。



「あなたがここにきた理由は? それすらも分からない、とは言わせないわよ」



「知りたいことがいくつかあったから」


「知りたいこと……ふむ。たとえば?」


「いろいろあるが、とりあえず、まずは、この世界の戦力を知っておきたいかな」


 そう言いながら、

 センは、魔力とオーラを練り上げていく。


 その圧力を受けて、『主』は、


(……底が見えない……凄まじいほど練度の高いフェイクオーラ……私の目をも欺いてみせる高み……)


 『主』の全身に冷や汗があふれた。


(……強大……っ)


 目の前に立つ敵が、

 『規格外のバケモノである』と理解すると同時、

 『主』は、

 胸の前で、両手を合わせて、

 バババッと、複雑な印を結ぶと、


「――『聖者の牢獄ランク1200』――」


 空間系の魔法を放った。

 と、センが認識できた頃には、

 すでに、隔離世界は完成されていた。


(この女……エグい速度で、エグい練度の空間魔法を仕上げてきやがった……完成度高ぇな、おい)


 『主』の高次元魔法を体験したことで、気合を入れなおすセン。


 そんなセンに向けて、

 『主』は、両手を向けて、



「フルパレードゼタキャノンッッ!!」



 宣言すると同時、

 彼女の両手に、巨大な銃器が召喚される。

 砲身がギュンギュンと音をたてる。

 膨大なエネルギー。

 はちきれんばかりの殺意。


「ブラスト、オフ」


 そして、放出される。

 信じられないほど膨大なエネルギーの嵐。


 それをまのあたりにしたセンは、

 奥歯をかみしめて、


「バッキバキにエグい殺意を放ってくれるじゃねぇか!」


 叫びながら、

 両手に魔力をぶちこんで、



「異次元砲ぉおおおおおおおお!!」



 アウターゴッド級の魔力をぶちこんだ異次元砲をぶっ放す。


 二つの膨大なエネルギーは、両者の間で激しくバチバチと音を立ててせめぎ合う。


(私のフルゼタに拮抗するほどの魔力……とんでもないバケモノっ)


「俺の異次元砲で貫通できねぇとは、やべぇエネルギーだな、おい!」

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