最終話 めでたし、めでたし。


 最終話 めでたし、めでたし。


(……な、なんだ……このおぞましい寒気は……何かが……何かが近づいてくる……)


 センの視線の先、

 十メートルも離れていない所に、

 次元の亀裂が入った。


 その亀裂の奥から、

 『彼女』は顔を出した。




「……ちっ、貴様ら、それでも、主上様の配下か。……無様に寝転がりやがって……敵は完全に無傷じゃないか……クソの役にも立たない雑魚ども……」




 『彼女』は、信じられないほどの美女だった。

 研ぎ澄まされた妖艶さの奥からにじみ出ている、

 圧倒的超越者のオーラ。

 『命の壁』を超えていると一瞬で理解できる別次元の威圧感。


 『どことなく、紅院美麗に似ている』――などと、

 センが、反射的に、そんなことを思っていると、

 その美女は、

 ギラリとした強い目で、

 これでもかと、センを睨みつけ、




「それで、貴様は何型だ? P型か? それともD型か?」




 そんな、『奇妙な質問』を投げかけてくる。

 センは、二秒ほど、相手の発言の意図を考えてから、


「……俺はA型だ。あふれ出る几帳面さがとどまるところを知らないだろう? ちなみに、俺のことを、O型あつかいする輩が、たまにいるが、それも、実は、ちょっとだけ正解だ。母親がAで、父親がOだからな」


 などと、どうでもいい言葉で場を繋ぎながらも、

 芯の奥では、オーラと魔力を練り上げていくセン。


 ちなみに、先の血液型発言は、余裕からくるシャレではなく、

 あまりにも重たいストレスに晒されたがゆえの現実逃避。


 単純に、センは、今、ビビっている。

 彼女の覇気におびえ散らかしている。


 警戒心が、限界を突破していく。

 心臓の加速が止まらない。

 感じているのは純粋な恐怖。

 気づけば、両手がプルプルと震えている。


(……やばい……この女……ヤバすぎる……カンツたちとは、次元が違う……この女のヤバさは、質量も、数字も、ケタが違う……)


 内心でビビリ散らかしているセンに、

 彼女は、


「A型? また違う型番が出てきたか……やれやれ」


 心底鬱陶しそうにそうつぶやいてから、


「ゴミにしか見えないが……しかし、貴様ら、『主上様のパチモン』が、『一見すると、ただのゴミクズだが、中身は、とんでもなく厄介である』ということは骨身にしみている」


 何かを思い出すように、そう言ってから、

 『眼光の鋭さ』を、さらに一段階引き上げて、



「……だから、手抜かりなく、キッチリと排除してやる」



 ハッキリと、そう宣言した。


「……パチモン? ……ふざけたことをぬかすなよ、クソアマ。俺のどこが、パチモンだって証拠だよ」


 強気のブロント語をはさみつつも、

 しかし、軽く後退(あとじさ)りしているセン。


 どうにか、言葉だけでも、強気であろうとして、

 けれど、体は素直に、恐怖を表現している。


 そんなセンに、

 彼女は、右手を向けて、




「――『異次元砲』――」




 一切の、情け容赦なく、凶悪な火力の照射ビームを放ってきた。


「ぷぺぇええええっ!!」


 その照射の威力は、常軌を逸していた。

 命を根こそぎ削り取っていくかのような一撃。


 当たり前のように、

 センの肉体は跡形も残さずバラバラになって、この世から消失した。



 ――こうして、センエースの物語は幕を閉じた。

 めでたし、めでたし。


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