89話 バグ技の代償。


 89話 バグ技の代償。


(まったく別系統のゴミ技……こんなもん、なんぼ改造しても意味ない……コイ〇ングとギャ〇ドスぐらいの関係性やったら、どうにかできるかもしれんけど、コ〇キングとミ〇ウぐらい違うから、どうしようもない……)


 だが、その時、

 トウシに電流走る。


(……この二つ、方向性は、当然、全然違うけど、管理データ上のルーチンでは同じ値が使われとる……鬼ラッキィイイ……これなら、領域を超えたコピーでバグらせれば……)


 チートを乱舞して、

 どうにか、究極超神化プラチナムを究極超神化7に変えようとする無茶なトウシ。


 その作業の中で、

 トウシは、


(……コスモゾーンは堅牢で堅実……バグは存在せん……けど、理論上、完璧なプログラムなんてものは、この世に存在せん。使われとる言語がパイソンやろうが神字やろうが、そんなもんは関係なく、コードとして組まれてしまった以上、所詮は、不完全な記号の集合体に成り下がる……それこそ、まさに、神様のパラドックス……)


 悪意だけでプログラムを改竄していく。

 なかなかしんどい作業だったが、


(ソートの領域にアクセス……入れ替えの処理にバグをぶちこむ……管理データを部分的に共通にして……)


 コスモゾーンをバグらせようとした結果、


(……ん?)


 ゾワっと、全身を寒気が襲った。


(これは……なんや……っ)


 ビビっていると、

 『センキーの中にいるトウシ』の『目の前』に、

 奇妙な虫が湧いて出てきた。

 薄羽の生えた、中型犬サイズの、大きなサソリみたいな虫。



(え、なにこれ……)



 どんな時でも豪速で回転するトウシの頭脳が、

 即座に、『予測』をうちたてる。


(まさか……ワシが『コスモゾーンに仕込んだバグ』が『具現化』した?)


 『ワケの分からない思考』だと自分でも理解しているのだが、

 しかし、そうとしか思えない圧力を感じた。


 その『虫』は、


「ギギ」


 トウシをロックオンすると、

 そのまま、タメも間もなく襲い掛かってきて、

 トウシの腕にくらいついた。


「ぐぁあああっ!」



 ふりはらおうとするが、

 強靭な牙に食い込まれて振り払えない。


「ぐっ……くそ!」


 残っている腕でどうにか殴りつけるが、

 腕が痛むだけで、虫はビクともしない。


 ――と、そこで、




「――閃拳っっ!!」




 突如、目の前に具現化されたセンが、

 トウシの腕にかみついた虫を、

 正拳突きで吹き飛ばす。


 一撃で、跡形もなく吹き飛んだ虫。


 脅威は去ったが、しかし、


「ぐ……ぅ……」


 トウシの苦しみは消えない。

 真っ青な顔で、ゼーゼーいいながら、


「ぁ、あかん……おそらく、毒をブチこまれた……マジであかん……死ぬ」


「ふざけんな。お前がいないと、ヨグに勝てないだろうが。生きろ。死ぬのはヨグが死んだあとにするんだ。いいな」


「……あ……やば……動けな……目も……かすんで……」


 死にかけているトウシを見て、

 センは、


「……ちっ……くそが」


 忌々しそうに吐き捨ててから、

 トウシの腕をつかんで、


「きっしょいなぁ……くそがぁ」


 そう言ってから、

 『バグに噛まれた箇所』に口をあてて、

 毒を吸い出そうとする。


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