25話 全部、自力で構築する天才。
25話 全部、自力で構築する天才。
命乞いをしても無駄だということぐらいは分かる。
トウシはバカではない。
だからこそ、その『誰よりも豪速で回転する頭脳』を、
これまでの、どんな時よりも、全力でまわして、
この状況を打破する突破口を見つけようと模索。
(考えろ……もっと深く……もしかしたら、もう詰んどるんかもしれんけど……仮にそうやったとしても、せめて、死ぬまでは、思考を止めるな……恐怖はいらん……あとで、どんだけビビリ散らしてもええから、今だけは、この恐怖と真っ向から向き合え……)
沸騰する頭脳。
狂気の回転速度。
(何か…なにかぁ……っ)
誰よりはやく、
(届け……見つけろ……答えを……なにかぁあああ!!)
誰よりも高く。
その結果、
トウシの頭脳は、
(……あったっ……)
――届く。
(ありえない量と速度の演算が必須。だが、ワシなら出来る! これは、ワシにしか出来ん不可能や!!)
それからは、高度な演算のオンパレード。
とにかく、豪速で組み立てていく。
どうすれば、
今の理論を形に出来るか。
それだけで頭の中がいっぱいの修羅となる。
――そんなトウシに、
ロイガーは、
「もう、無駄話は終わりか? では、そろそろ死のうか」
そう言いながら、右手を、トウシに向けた。
その右手には、ギュンギュンと魔力が集まっていく。
ソレが放たれてしまったら、
トウシは確実に死ぬ。
それがハッキリと理解できたトウシは、
だからこそ、
「30秒、くれ!」
「ああ?」
「贅沢は言わん! 5分とは言わん! 3分とも、1分とも言わん! たったの30秒だけ、ワシに、あがく時間をくれ! ほんの30秒や! 頼む! そのぐらいの慈悲はみせてくれ!」
「貴様の頼みを聞いてやる筋合いなど一ナノたりともないのだが……」
そう言いつつも、ロイガーは、
「……彼我の差を考えれば、30秒の猶予を与えたところで、何ができるとも思えんし……仮に、この危機的状況を、たった30秒でどうにか出来るのであれば、それはそれで見て見たいとも思う……」
ぶつぶつと、そう言ってから、
「……戯れに、30秒だけ待ってやる」
そう言いながら、
右手に、さらなる魔力を投入していく。
より強く、より深く。
ロイガーの慈悲を受けたトウシは、
すぐさま、F‐クリエイションを起動して、
神字の打ち込みにかかる。
(ニューラルネットワーク補助システムをフル稼働して、『ワシの頭の中にあるすべての記憶』をデータ化っ!)
どうすれば、それが実現できるか、
そのイメージだけなら十分に出来上がっている。
頭の中で、イカれた量の数式が飛び交う。
人の限界を置き去りにした英知が暴走する。
(特異点を二つ生成し、電荷を加えてスピン――すべての速度を限界化――ティプラー重力正弦波内のイベントホライゾンにアプローチ――双子特異点リング通過のシミュレーションを実行――局所場の適合――検算しとる暇はない――ぶっつけでいく――相対性理論への反逆――F-クリエイションをフルで使っても、ワシそのものを通過させられるだけの穴をあけるのは、さすがに厳しい――となれば答えは一つ――ワシの記憶だけを……過去へと飛ばす!!)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます