4話 最高位異常者との邂逅(かいこう)。


 4話 最高位異常者との邂逅(かいこう)。


(才藤のやつ、あの銃崎とかいう女のことを、『とんでもない目』で睨んでいるな……完全に不審者だ。俺がただの一般市民だったら、全力で通報しているところだぞ)


 かなり偏見も混じっているが、

 しかし、実際のところ、才藤の『銃崎を見る目』は、普通ではなかった。



 センの視線の先で、才藤は、『この世の全てを憎悪しているようなサイコ極まりない顔つき』で、『掃いて捨てるほどいるモブ』の群れに埋もれて窒息しそうになりながら、自分のクラスに向かっている。



 それに続くセン。

 ゴールは、第十二校舎の六階。

 第五校門から三百メートルほど先にあるマンションみたいな高層建築物。


 センと才藤が通っているこの高校の名は、桐作学園高等学校。

 少子化の現在でも一万人近い生徒が在籍している、日本一のマンモス高校。


(しかし……この学校、広いな……時空ヶ丘学園も頭おかしいが、この学校も、同じぐらいイカれている……なんで、どの世界の俺も、変な高校に通ってんだ……もっと、まとも高校を選んでくれよ……イカれた厨二じゃねぇんだからよぉ……)


 どうにか校舎に辿り着いてもまだ苦行は終わらない。


(階段、うざ……もういい、瞬間移動しよ……)


 心の中でそうつぶやきつつ、

 センは、校舎の外に出て、裏手にまわり、

 ササっと周囲に人目がないことを確認してから、


 最上階の踊り場まで瞬間移動して、

 そこから、ゆっくりと下に降りる。


(アウターゴッドを重ね着している俺は、一般人と同じ苦労などしないのだよ、はっはっは)


 などと、心の中で優越感に浸っているセン。


 優雅に階段を下りていると、

 そこで、



「……あれ? そこの君、10秒ぐらい前まで、外にいまちぇんでちたか?」



 ボリューム満点の煌く金髪。

 キラッキラの鬼メイク。

 全身からアホを放出している、非常に頭が悪そうなギャルがニタニタ笑いながら、謎のステップを踏みつつ近づいてきて、


「外から、ここまで、どんなに頑張っても1分以上は、余裕でかかると思うんでちゅけど? んー? あれー?」


「……」


 センは、普通に動揺しつつも、

 彼女の顔を見て、心の中で、


(……茶柱に似ているな……)


 と、つぶやく。

 ちなみに、同時刻、

 天童も、心の中で、


(佐々波に似ている……)


 と、つぶやいていたが、

 誰に言うでもない言葉だったので、他者の耳には届いていない。


 ――両者が、他の女の事を考えていると、

 そこで、酒神が、小首をかしげて、


「もしかして、君、瞬間移動とか使えるんでちゅか?」


 などと聞いてきたものだから、

 センは、一瞬だけ、頭の中で、


(もっと慎重に動くべきだったなぁ)


 と、後悔の言葉を並べてから、

 ゴホンと、セキを一つはさみ、


「……見間違いじゃないですか? 俺みたいなモブ顔はどこにでもいますからね。正確に見極めるのは至難の業かと」


「こんな重度のへちゃむくれ、そうそういないと思いまちゅけど?」


「……重度のへちゃむくれって、どういう状態?」


 そんなセンの疑問符を華麗にシカトして、

 彼女は、


「瞬間移動は、どこでマスターしたんでちゅか? やっぱり、ヤードラ〇ト星人に教えてもらったんでちゅか?」


「……瞬間移動なんて使えませんよ。単なる、あなたの見間違いです」

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