18話 何が正解か迷う閃光。


 18話 何が正解か迷う閃光。


 ――いきなり襲ってきたファーストゴーレムとの戦いの中、

 才藤は、


(考えてもわからない。ともかく、まずは、目の前の敵……ファーストゴーレムを撃退し、身の安全を確保すること。幸い、こっちは4人いる。職業がなんでも、勝てなくはない)


 難しい事は後回しにして、まずは生き延びる事を考えていた。

 死を回避する事――それだけを考えて立ち回っていた。


 その途中で、


(聖堂も酒神も、バカみたいに強ぇ。素ステが鬼高い上に『S級職』とか、強運すぎだろ)


 中学時代、毎日考え続けていたTRPG『真理の迷宮』。

 こだわったのは、自由度の高さと、世界感の広大さ。

 モンスターや職業の数は数千種類、アイテムに至っては数億種類。


(……『明らかに強い職業』を引ける確率、すげぇ低かったのに、たまたま居合わせた2人が強職とか、マジで神引き! まあ、そこで運を使い果たした感が、俺と閃の性能を見る限り、どうしても否めないんだが……なんで、俺ら、一番弱い『村人』なんだよ。メイン職業が、最低最弱の村人になる確率だって、相当低いのに、二人とも最低職って、まったく……)


 適正職業とステータスは完全にランダム。

 つまりは現実と同じ。


(まあいい。とりあえず、俺と閃の性能に関しては、後で、ゆっくりと頭を抱えればいい。まずは、当面の問題。どうやって生き残る――まあ、聖堂と酒神がいれば、ぶっちゃけ、このチュートリアルは楽勝。だとすれば、先の事を考えて、二人のランクを上げるべき)


 才籐は頭の中で、『先の先』を見据える。


(この迷宮では、『強い探究者』がいて困る事はない。というか、いないと困る。『本当にそうなるかどうか』はまだ分からんけど、もし、俺の定めた通りに事が起こるなら、探究者が、『特定時期までに特定条件』を満たさないと……世界が終わる)


 冗談ではすまない、世界の終焉。

 それが、この迷宮の攻略に失敗した際の罰ゲーム。



(流石に、ガチの終末は許容できん。そんな責任、取れん、取れん)



 ――などと、才藤がいろいろ、未来について考えている間、

 センは、


(俺の性能や、真理がどうこうという点に関しては、さっぱり意味不明だが……とりあえず……うん……あのゴーレム程度なら、間違いなく、ワンパンで殺せるな。あのデク人形は、素のロイガーよりもはるかに弱ぇ)


 才藤の隣で、女子二人の闘いを見守りながら、

 心の中で、


(戦闘に不慣れな女子高生二人に翻弄されるようなゴミ。元の世界に戻るための条件に、『あれを殺すこと』は含まれていないだろうな……『無数にある条件の中の、ちょっとした一つではある』という可能性なら、大いにありえそうだが)


 あの女子二人に『才能がある』というのは、センも認めるところだが、

 しかし、ついさっき『力』を得たばかりなので、

 センの目からは、どちらも『素人』でしかない。


 そんな素人にボコられている雑魚モンスターなど、

 センの眼中にない。


(さて、どうするべきか……これが、もし本当に『こいつらのためのチュートリアル』なんだとしたら、あのゴーレムを俺がワンパンで沈めるのは、条件的にどうなんだ? 俺がはしゃいで無双することは……はたして、正解か?)

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