25話 すべてが、いろいろと噛み合わない。
25話 すべてが、いろいろと噛み合わない。
「ジブン、お嬢様に対する偏見が強すぎん? いや、まあ、いいたいこと、わかるけどな。実際、ミレーやツミカなんかは、なかなか謝らんし」
最後までゴネ切るわけではないが、
なんだかんだとズルズル、謝罪を先延ばしにするタイプ。
それが、紅院美麗と、茶柱罪華。
「マナミは、分が悪いと思ったら、けっこう、簡単に謝るけど……あいつの場合、口だけやからなぁ……だいたい、心の中では舌を出しとる。カズミだけは、まともに謝れるタイプの常識人やったんやけど……唯一のマトモなヤツが、逝ってもうたからなぁ……」
暗い表情で、消えそうな声。
「あかんなぁ……頭では、踏ん切りをつけたつもりではおるんやけど、やっぱり、思い出したら、まだキツいなぁ」
泣きそうな声になったが、
涙は流さない。
その姿からは、
『絶対に泣いてやるものか』、
という剛健な気概を感じた。
その肝魂(きもったま)を見て、センは、
(強い女だ……)
と、素直にそう思った。
「カズミは、あたしらの中で、一番強い女やったんやけどなぁ……一番というか、もう次元が違うレベルで強かったのに……人生ってわからんもんよなぁ」
「……まあ、事故云々に『武道の強さ』とか、関係ないだろうしな。仮に腕立て10万回出来たとしても、トラックに突っ込まれたら終了だ。サ〇ヤ人ぐらい強くなれるなら、鍛え方しだいってところもあるだろうが、地球人がいくら頑張っても、タカが知れているからなぁ」
「……」
意味深な沈黙をするトコに、
「?」
じゃっかんの違和感を覚えるセン。
トコは、二秒ほど黙ってから、
「……そやな」
と、簡素な返事をしてから、
「それより、ジブン……度胸、エグいな」
「度胸? は? なんの話?」
「なんの話もクソもあるか。ハッキリ言うけど、あたしは、佐田倉が、あんたにつかみかかったところから見てんねん。せやから、ヤバいと思って、急いで駆け寄ったんや」
ちなみに、彼女は、クラスメイトの『蓮手』から、
『センが、ガタイのいい先輩に連れていかれた』
というタレコミを受けたから、様子をみにきていた。
その結果、遠目に佐田倉がセンに掴むところを確認し、
ダッシュで駆け寄ったというのが真相だった。
「まあ、佐田倉もアホやないから、あたしが止めんでも、『素人のあんた』を投げはせんかったやろうけど……佐田倉みたいな『クッソ大柄コワモテの上級生』につかみかかられて、それで、平然としとるて……あんたの神経、どないなってんねん」
その話を聞いて、センは、
(ふむ……どうやら、俺が、佐田倉を一回転させたところは見ていないようだな……)
トコは、
『佐田倉が、センにつかみかかったところ』までは見ている。
だが、ちょうど『まばたきした瞬間』と重なってしまったため、
トコは『センが佐田倉を一回転させたシーン』を、
ギリギリのところで見逃してしまったのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます