24話 センエースは実は天才だった説。
24話 センエースは実は天才だった説。
(な……なんや、この圧力……こ、このあたしを……なんで、男子高校生ごときが……)
普通に動揺しているトコに、
センは、淡々と、
「遠足でどこに行くか聞かれたから答えていただけだ。あと、『薬宮たちは、厄介なバックボーンを背負ったお嬢様だから、同行する俺には、色々と面倒な負荷がかかると思うが頑張れ』……的な激励をもらっていた。それだけだ。お前が、センパイにキレていい理由は一つもねぇ。そうっすよね、センパイ」
そう声をかけると、
佐田倉は、
少しだけ逡巡したものの、
「……ぁあ」
と、『複雑そうな顔』で、そう返事をした。
『助けられる筋合いはない』が、
『助けてもらえて、正直ありがたい』という、
完全に相反する二つの感情の中で、
佐田倉は揺れている。
そんな佐田倉の心情を察したセンは、
トコに、
「まあ、『軽くウザ絡みされた』のは事実だから、正直、カットに入ってもらって、助かってはいる。ただ、だからって、センパイが過剰に怒られているところを見るのは、俺の気分的に、よくはねぇなぁっていう、それだけの単純な話――というわけで、この件は、これで終わりにしたいんだが、それでいいか、薬宮」
「……まあ、あんたが、その方がエエっていうなら、こっちとしては別に……」
「ありがたいね。惚れてしまいそうだ。けど、惚れちゃダメなんだよな。わかってる、わかってる」
と、軽くチャラついた言葉を残して、
「じゃ、そういうことで」
センは、そそくさと、その場を後にした。
★
軽く駆け足で、
あの場を後にしたセンは、
ほんのりと息をはずませながら、
自分の両手を見つめ、
(……柔道なんざ、授業以外で、やったことねぇんだけどなぁ……俺って、もしかして、天才なのかね……いやぁ、でも『俺の無能ぶり』は只事じゃねぇからなぁ。『実は俺は天才だった説』の可能性は低いよなぁ……もちろん、たまたま柔道に特化した才能があったという可能性はゼロじゃないだろうけど……)
などと、考えていると、
背後から、
「ちょ、待て待て」
と、駆け寄ってくるトコ。
センは、軽くウザ顔を向けて、
「え、まだ、なんかある?」
「そっちの用件は終わったか知らんけど、こっちの用件は一ミリも終わってへん」
そう言いながら、センの横に立つと、
「一応、こっちの気がすまんから、謝っとく。別に謝ってほしくないっていうなら、聞き流したらええ。とりあえず……あたしの知り合いが、変に絡んだりして、もうしわけない」
そう言って、軽く頭を下げるトコ。
「へぇ……『お嬢様って種族』はデフォで『謝れない特性』がついている生き物だと思っていたが、普通に頭を下げるって機能も備わっているんだな」
「ジブン、お嬢様に対する偏見が強すぎん? いや、まあ、いいたいこと、わかるけどな。実際、ミレーやツミカなんかは、なかなか謝らんし」
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