87話 1000万オーバーの圧迫感。


 87話 1000万オーバーの圧迫感。


「神化したワシらのMAX存在値は『1000万』を軽くこえている! 貴様に勝てる道理などない!」



「……ぃ、いっせんま……て、てめぇ……なにを、ふざけたこと……」



 反射的に『ハッタリ』をうたがったものの、

 しかし、センの心は、

 『カンツの言葉が、ハッタリではない』と理解できていた。


 『くだらない嘘をついている目』には見えなかったから。

 もっと言うと、カンツという男に対して、

 そういう嘘をつくような印象を抱かなかったから。


 まだ、出会ってから数時間も経過していないが、

 しかし、拳を交わし合ったことで、

 センは、カンツの人間性を、ほんのりと理解していた。


 だから、


(……1000万……ありえねぇ……)


 素直に、その『数字の暴力』に体を震わせた。


 額と背中の激痛に耐えながら、

 センは、心の中で、


(こいつら四人は、オメガ虫よりも、はるかに強い武力をもっている……その上で、数値も、オメガ虫の20倍以上……か、勝てるわけがねぇ)


 『50万級』を『100体同時』に相手できるセンだが、

 しかし、それは、相手を『殺し慣れた虫』に限定した場合。


 オメガ虫は、ハッキリ言って、対処法がハッキリしていた。

 弾幕を避けて、中心を殴れば、それで殺せた。

 ようは、ハメ殺すことができた。


 しかし、当然ながら、アクバートたちにそういう戦法は取れない。

 彼らは、正真正銘、『強い』のだ。


 オメガ虫のように、『壊れた本能』を『暴走させているだけ』のザコとは違い、

 正式に『強者』なのである。


 ――ゆえに、


「ぐほっ! がはっ! げへっ! ごほぉおおお!!」


 センは、ボッコボコにされた。


 ジャクリナとアストロギアの後方支援を受けながら、

 前衛で、カンツを盾に、アクバートを剣に、

 ゼノリカは、センエースをボコボコにしていく。


 質の高い連携。

 スキのないパーティ。


 高次元のスペシャリストたちが、

 美しさを感じるほど『一体』となって、

 センエースを圧殺しにかかる。


 手も足も出せず、いいようにフルボッコにされているセンは、


「くそが、くそが、くそがぁああ! 勝てるか、こんなもん!!」


 ただの悲鳴を叫ぶ。


 極限の戦闘力をフル稼働させているが、

 しかし、出力の差が大きすぎて、

 まったく対処しきれない。


「こ、こんな! こんな数字の暴力は、さすがに反則だろ! なんだ、1000万って! インフレもたいがいにしろ!!」


 不満を大声で叫ぶセン。


 そんなセンを囲んでいるアクバートたちは、

 センほどではないが、

 ずいぶんと渋い顔をして、

 軽く、冷や汗を流しながら、


「文句をいいたいのは、こっちの方だ……なんで……貴様、死なない……」


 大きな疑問符を浮かべていた。


 すでに、アクバートたちは、何度か、

 センに対して『トドメの一撃』を放っている。


 しかし、センは、そんなアクバートたちのフィニッシュを、

 普通に、すべて、耐えきってしまった。


 無効にしているというわけではない。

 大ダメージを受けてはいる。

 だが、しかし、

 まったく、死ぬ気配を見せない。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る