78話 バランス崩壊。


 78話 バランス崩壊。


「もはや、GOOごときに苦戦することはありえない。俺を殺せるのはアウターゴッドだけだ。お前ら流の言葉を使うとすれば――俺とお前らじゃ、命の格が違うんだ」


「なにを! なにをワケのわからないことを!! 下等生物風情が、何をどれだけ積もうと、イソグサに勝てるわけがあるかぁああ! イソグサは、この私よりも強い最高格のGOOだぞぉお! 人間なんぞに、負けるなんざ、ありえてたまるかぁああああ!」


 オーラを暴走させるゾス。

 メキメキと肉体が膨らんで、

 色合いもドス黒くなっていく。


「お前ら、ダークカラーになるの好きだな」


 そう言いながら、

 センは、図虚空を消して、

 素手で武を構える。


 そんなセンに対し、ゾスは、


「私たちは誇り高きグレートオールドワン! 畏(おそ)れられることはあっても、侮られることなど、絶対に、絶対に、絶対に、あってはいけないんだぁあああああ!」


 怒りとプライドに任せて、

 無策な暴走特攻をしかけてくる。


 凶悪な圧力。

 一般人であれば、その狂気に、

 SAN値をゴッソリと持っていかれること間違いなし。


 しかし、センは、遥かなる高みから、


「ははは。見た目と性格通りの脳筋バカか。正直、お前みたいな知性ゼロのパワーキャラを手持ちに加えるのは、ノイズになりえるから、ふつうにイヤなんだが……まあ、でも、生命力は高そうだから、壁として使うだけなら、ギリギリ出来なくはないだろう。今のところは我慢してやるか。将来的に、もっといいのを眷属にできたら、速攻で捨ててやる気満々だけどな」


 そう言いながら、センは、

 ゾスの特攻を、軽やかに受け流す。


「うぉお!」


 楽勝でひっくり返されたゾス。

 何が何やらの顔をしているゾスに、

 センは、


「――『本物のバカ』は嫌いだ。鏡を見ているようで、吐き気がする。というわけで、テメェの、その『終わっている性格』を、どうにかして、あらためろ。もし、改善が一ミリも見られないようだったら、マジで、すぐに捨てるから、覚悟しておけ、バカが」


 そう言いながら、




「閃拳」




 顔面に向かって、

 必殺の拳をおみまいする。

 単なる正拳突き。

 ただ、気を整えて、拳を前に突き出すだけの簡単な拳。

 しかし、



「ばっはぁあああああああっっ!」



 その簡易な拳一発を顔面にくらうだけで、

 あっさりと瀕死になるゾス。


 高位GOOを倒した余韻に浸ることすらなく、

 センは、


「――奪い取れ」


 サクっと図虚空にくわせつつ、

 心の中で、


(マジで、俺は、だいぶ強くなったな。仮に、ゾスの10倍ぐらい強いGOOがきても楽勝。100倍でも余裕。1000倍でも、どうにか出来なくはない。もはや、GOOは、相手にならねぇ。俺は本当に強くなった……)


 自分の成長ぶりに満足しつつも、

 しかし、だからこそ余計に、


(……だが、そんな俺でも、アウターゴッドには手も足も出ない……)


 そのイカれた事実に辟易する。


(いくらなんでも、『命の格差』がありすぎだろ、ふざけやがって。バランス調整ミスりすぎなんだよ。『ド素人が、RP〇ツクールでつくったゲーム』でも、もう少し、ましなバランスをしているぞ)

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