77話 命の格差。


 77話 命の格差。


「そこの下等生物、口の利き方に気をつけろ。私は外なる神に成るもの。貴様ごときが気軽に話しかけていい存在ではない」


 あまりにも不遜な物言いのイソグサ。

 それに対し、隣にいるゾスが、


「グヒヒ、あんなカスみたいな下等生物相手に礼儀作法を教えるなんざ、バカのすることだぜ、イソグサ」


「見たところ、最低限の知性はありそうだ。ならば、最低限の礼儀は払ってもらう。それが私の流儀だ」


「ダルいオッサンだぜ。これだから老害はいけねぇ」


 などと、特に実りのない会話をする二名に、

 センは、


「粋がっていられるのは今のうちだ。お前らのようなGOOごときは、いくらランクが高かろうと、すでに、俺の敵ではないという事実に震えろ」


「グヒヒヒヒヒ! おい、イソグサ。とんでもないバカがいるぜ! 知的生命の中では最下層に位置するスーパー下等生物の分際で、グレートオールドワンを愚弄しやがった!」


「わからせてやる必要があるな。命の格差。高みに至った神格の器というものを」


 そう言いながら、

 イソグサは、センの背後に瞬間移動でまわりこみ、


「その身に刻んでやろう。本物の恐怖を」


 そう言いながら、

 センの首を狩りとろうとした――が、




「――人間を下等生物あつかいするのは、てめぇらの自由だが――」




 センは、イソグサの腕をひねりあげつつ、


「どぅあああああああああああああああっっ!!」


 その場で一回転させて、

 頭から地面にたたきつける。

 回転性のねじれ。

 複雑に絡み合って歪んで果てる。



「げほっ……がはっ……っ――」



 白目をむいているイソグサ。


 その様を見て、ゾスが、


「えっ……なっ……はあぁ?!」


 『わずかも理解できない』という顔で呆けている。

 『目の前で起こった現実』が、一ミリも信用できないという顔。


 そんなゾスの視線を背中に感じながら、

 センは、イソグサの頭を踏みつけて、


「――この俺をナメるのだけは、金輪際、やめておいた方がいい。特に、今の俺は、理不尽なミッションを押し付けられていて、非常に、不機嫌な状態にある。『不条理な八つ当たり』をかますのは『信条に反する』から、なるべくしないようにと心がけているが、しかし、『理由がある折檻(せっかん)』なら、普通に躊躇なく実行するから、そのつもりで」


 宣言した直後、

 センは、図虚空にイソグサを食べさせる。


 その様子を漏らさず見ていたゾスが、



「て、てめぇえええ! イソグサに、何をしたぁあ!! なんで! イソグサが! イソグサほどの神格が! 貴様のようなカスにぃいい!」



「イソグサは、確かに凶悪なGOOだ。それは認める。出会った時期が『図虚空すら入手できていない最序盤』だったら、手も足も出せずに惨殺されていただろう。だが、俺はすでに、地獄を積んでしまった。必死に超えてきた無数の絶望たちが、俺の中で、大きな器になっている。もはや、GOOごときに苦戦することはありえない。俺を殺せるのはアウターゴッドだけだ。お前ら流の言葉を使うとすれば――俺とお前らじゃ、命の格が違うんだ」

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