43話 彼を理解する術。


 43話 彼を理解する術。


「その自覚があったら、ここまで狂うわけないやろ。もう、ええから、ソレはほっとけ。もう、ぜんぶ手遅れや。もっと言うたら、最初から手遅れや」


 切り捨て発言を投下するトコを横目に、

 茶柱は、何度か首を横に振りながら、


「はぁ~、やれやれ、これだから、トコてぃんは」


「そのムカつくタメ息、二度と吐くなよ。次、やったら、眼球に、神聖毒をブチ込んだるからな」


「愛され体質のパーフェクトスーパー美少女ツミカさんに嫉妬する気持ちは分かるにゃ。けど、トコてぃんも、そこそこの美少女だから、大丈夫、大丈夫。いつか、そんなに悪くない男と、そこそこの恋愛が出来る可能性が、ゼロではないはずだにゃ。きっと、たぶん、おそらく、形而上の天文学的な確率論的には」


 茶柱の煽り発言に対し、

 トコは、全力の般若顔で無言の圧力をかけていく。


 この表情が出た時は、ガチでキレているときである、

 と理解している紅院が、間に割って入ってきて、


「ツミカ、場をかき乱すだけの無駄な煽りは、その辺で勘弁して」


 ガチめの懇願を受けて、

 茶柱は、


「煽る? おかしなことを言うにゃぁ。ツミカさんは、真摯に、真実を並べているだけにゃのに」


 などと、スタンスを一定に保ちつつも、

 一歩、後ろに下がることで、

 ターンエンドを宣告する。


 その流れを汲み取った黒木が、

 空気を整えるように、

 一度、ゴホンとセキをはさんでから、


「とにもかくにも、『彼』を『理解する』のが、我々の急務であり絶対の課題だとおもいます。彼ほどの力があれば、今後、そこらのGOOに苦戦することはないでしょう。当面の面倒事に対する『保険』ができたと認識し、『センエースという人間を理解すること』に、世界の全てを賭すべきだと、私は思います」


「……『理解する』ねぇ……具体的には?」


 という、紅院の問いに、黒木は、

 軽くメガネの位置を直しながら、


「まずは、バックボーンを全て解析します。その上で、彼の『望み』をもれなく分析し、そのすべてを提供し、今後の協力を要請する。単純な話です」


 ――などと、

 そんなことを話し合っていた、

 その時だった。


 彼女たちの視線の先で、

 次元に裂け目が出来た。


 大きさは3メートルほど。


 その次元の裂け目から、



「ギギっ……」



 奇怪な生物が這い出てきた。

 身長二メートルほどの、人間で言えば、かなりの大柄な化け物。

 ゾウのような長い鼻を持ち、

 全身が、鱗(うろこ)のようなものでおおわれている。


 それを見て、

 紅院が、渋い顔で、


「……こ、こんな朝っぱらから……嘘でしょ?」


 額に冷や汗を浮かべながら、


「……『呪いの発動でアウターゴッドが強制召喚される』とかならまだしも……まさか、普通に、夜以外でも神話生物が出現するなんて……」


「こんなん初めてちゃう?」


「そうですね。まあ、ただ『初体験』のランクで言えば、『携帯ドラゴンも持たない同級生の男子高校生が、アウターゴッドを吸収してしまった』という経験の方がはるかに上なので、さほど驚いていない自分がいますね」


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