44話 アウターゴッドになるための贄。


 44話 アウターゴッドになるための贄。


「――『初体験』のランクで言えば、『携帯ドラゴンも持たない同級生の男子高校生が、アウターゴッドを吸収してしまった』という経験の方がはるかに上なので、さほど驚いていない自分がいますね」


「驚きレベルでは、確かに、センの方が上やけど、『ウザさ』だけでいうたら、『こっち』もかなりのもんやで。まさかと思うけど、今後は、夜以外でも、普通に神話生物が沸くとかいう話になってんのとちゃうやろな」


 などと言葉を垂れ流しながら、

 神話狩りの美少女たちは、

 各々、携帯ドラゴンを召喚し、

 臨戦態勢に入った。


 そんな彼女たちを睥睨しつつ、

 突如あらわれた『奇怪な化け物』は、




「信じられん。この虫けらどもを殺すだけでいいのか? な、なんと、たやすい仕事か。あまりの難易度の低さに驚かされる」




 ニィと、愉悦を強めて、


「たったこれだけで! こんなカスどもを殺すだけで! 私は、アウターゴッドになれるというのか! なんという僥倖! これ以上の幸福はない!」


 全身で喜びを表現する化け物。


「あれだけ願って! けれど、決して叶わなかった夢! 私の魂を縛っていた悲願! 絶対に超えられないと嘆くしかなかった壁! 私の全てが、今日、満たされる!」


 己の幸運を叫びつつ、


「いくぞ、カスどもぉ! 死を教えてやる! その結果をもって、私は今日! 神になる!!」


 その言葉を皮切りに、

 その奇怪な化け物は、

 彼女たちを殺そうと突撃を決め込む。


 謎の歓喜に震えるバケモノの猛攻を、全力で迎え撃つ美少女たち。


 変身する紅院、

 毒を放つトコ。

 バックでバフ役に徹しようとする黒木。


 そんな彼女たちの連携に対し、

 化け物は、


「無駄無駄無駄ぁ!」


 紅院の一撃も、トコの毒も、

 『無意味』と言わんばかりの勢いで、

 彼女たちを圧殺しようとする。


 彼女たちは、一瞬で気づいた。

 目の前の化け物が、

 自分たちでどうにかなる相手ではないということ。


「む、ムリ……っ……勝てない! こいつ、強すぎる……っ」




「当たり前だ! 私はガタノトーア・ヨグカスタム! S級グレートオールドワンの中でも最高峰の神格! 貴様らのような下等生物とは、命の格が違うんだ!」




 遊びのような軽い一手で、

 紅院とトコの二人が飛ばされる。


「ああ……楽しみだ……私はこれから神になる。求めていた世界にいける。そう思うと、少し躊躇してしまう。おびえているわけではない。メインディッシュを取っておきたい気持ち。そのぐらいなら、貴様らの虫ケラでも、少しは理解できるだろう?」


 おいしいものを後にしてしまうタイプ。

 自分を焦らして喜ぶ気質。


「私は、今から神になる……神……ああ、甘美な響きだ。私は、ついに神になる。そこから見える景色は、きっと、今とは違う。もう、私は、今に戻れない。だからこそ、今なんだ。最高の未来を目前に控えた今こそが、もっとも幸福な時間! 神になってしまえば、いずれ、慣れてしまう。神になったという喜びは、神で在り続けることで薄れてしまう。神になれるという僥倖を最も喜べるのは、目の前に立った今! 今なんだ!」


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