90話 永遠に死ね。


 90話 永遠に死ね。


「現状は、『慢心ゆえの油断をつかれた』というより、単純に『初見殺しをくらった』と言った方が正確かな。高次戦闘という領域において、あの女は、俺の想像を超えた。想定していた以上に搦め手が上手だった。結局のところは、それだけの話だよ」


 ダラダラと、無駄な言葉を並べつつ、

 センは、周囲を見渡して突破口を探す。


 数秒をかけて、あらかた検分を終えたところで、

 センは、ルースーに視線を向けて、


「お前を殺したら、この封印空間を消せるとか……そういう感じだったら、非常にありがたいんだけど、どう? そうではない感じ?」


「げはは! 自分の状況がイマイチ理解できていないようだな! 貴様は封印されているんだよ! この状況下では、オーラも魔力も、すさまじく低下している! そんな状態で、私に勝とうって? ナメるのも、たいがいにしておけ! 私は、この封印空間内においては、外でのアリア様以上の力も出せるんだ。見るがいい!」


 そう言いながら、

 ルースーは、全身に力を込めて、



「究極超神化7!!」



 膨大な神気を纏う。

 黒銀の結晶が空間を埋め尽くし、

 存在の高尚さを、輝きだけで物語る。


「みろ、これが私の力だ! この領域内において、私に勝てる者など存在しない! マヌケにも封印されてしまった時点で、貴様は終わり! ここは命の牢獄! ここが貴様の住所にして墓場! 貴様は、ここで永遠に囚われる! 『貴様の制御』という『無駄な労力』を永遠に強いられるのは非常に腹立たしいが、まあ、しかし、貴様が『その労力を払うに値する公害だ』とは認めてやる。誇りに思うがいい! そして、ここで永遠に死ね!」


 睨みを強くして、

 圧力をかけてくるルースー。


 そんなルースーに、センは、


「俺の質問に対する答えが返ってきていないが……しかし、話を聞く限り、『お前を殺したら、外に出られる可能性』が、普通にありそうだな……」


 ブツブツと、そうつぶやきながら、

 両手両足を伸ばして開いてストレッチ。


 ある程度、体をほぐしたところで、



「さて……それじゃあ、はじめようか。やれるかどうかは知らんけど、『とにかくまずはやってみる』ってのが、いつだって最重要。というわけで……いくぞ、ルーシー。殺してやる」



 飛び出したセンの挙動、

 そのすべてが、

 ルースーには見えていた。


「伊達で究極超神化7を使っているワケじゃねぇんだぜ!」


 直線で攻撃を仕掛けてきたセンに対し、

 ルースーは、最速のカウンターを決め込んできた。


(どわぁ……動き、速ぇ……っ)


 ギリギリのところで、ルースーのカウンターを回避するセン。

 けれど、その動きはモロバレで、完璧に読まれていたため、



「どっせい!!」



 緊急回避した先で、

 顔面に思いっきりチョッピングライトをもらい、

 センの体は地面に叩き込まれる、


「ぶっはぁああっ!」


 盛大に血を吐くセンに、

 ルースーは、続けて連打をぶちこんできた。


 殺意をむき出しにして、

 暴力の嵐を魅せつける。


「ぶへぇおっ! げほっ! がはっ!」


 豪快にボコられるセン。


 手も足も出ないとはまさにこのこと。

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