52話 さっきまでの時間、なんやったんや……
52話 さっきまでの時間、なんやったんや……
「あたしらが死ぬ前に、『想定外の救援』がきて、ロイガーを倒せたら人類は助かる。隠し玉なんかなくて、救援もクソもなく、ただただ、あたしらが殺されたら、そのまま世界も終了。以上」
「……なるほど」
そこで、トコは、
うーん、と、伸びをして、
「ほな、そろそろ戦おうか。……流石に、無限には待ってくれんやろうから」
そう言いながら、トコは、
屈伸や、肩回しをしながら、
「……グチ聞いてくれて、ありがとう。おかげで、ちょっとだけ、心が軽くなった」
「情報を収集しただけだ。礼を言われても挨拶に困る」
「はははっ、さよけ」
そう言って、
トコは、ロイガーと向き合う。
紅院と黒木と茶柱も、
すでに、戦闘準備は出来ている。
「ほな、閃。連絡係、任せたで」
そう言ったところで、
ロイガーが、
「作戦が固まったようなので、言っておく。この場から逃げようとした者は殺す。率先して狙う。そこにいる『イスの遺産すら持たないザコ二匹』に警告する。『我先に死にたい』という欲望がない限り、動かない方が賢明だ」
その宣言を受けて、
トコは、渋い顔になり、
「……おいおい、さっきまでの時間、なんやったんや」
「知るか。私は、私と戦う算段を立てろと言ったまで。貴様らの作戦を遂行させてやるとは一言も言ってはいない」
「連絡くらい、させてくれてもええんとちゃう? このままやったら、確定で、あんたのワンサイドゲームやで? それはおもろないやろ?」
「面白いかつまらないかなど、どうでもいい。私は私の役割を果たすだけだ」
「役割……ねぇ」
ロイガーの『含みのある発言』に対し、
色々と頭が働くところだが、
しかし、現状では、考えたところで答えが出るものでもない。
ゆえに、トコは、追及することなく、
静かに自分自身と向き合う。
そんなトコに、
ロイガーは、無感情に、
たんたんと、
「作戦を立て直すというのなら、待ってやるぞ。どうする?」
「変に親切やったり、妙に強かったり、もう、わけがわからんな……」
そうつぶやいてから、
トコは、紅院たちに視線を向けて、
「どうする? なんか、戦闘プランたてる?」
そう声をかけると、
紅院が、
「もういい。やるだけやって、まっすぐ死のう」
「……はは、まあ、もう、現状は、それしかないわな」
そう言ってから、
パンッ!
と、両手で、自分の頬を叩いてから、
「――さあて、ミレー。ショータイムや。全力で援護したるから、あのクソったれに、一泡吹かせたれ!」
トコの激励を合図に、
紅院は、グっと奥歯をかみしめて、
「……トランスフォーム。モード・GOO/レベル2」
宣言した瞬間、紅院の体が、真っ赤な闘気を放つ龍化外骨格に包まれた。
脈動するジョイントは焔(ほのお)を纏っていて、時折、黒煙を吐きだしている。
顔だけが見えている兜の額には、燃え盛る火炎を象った猛々しいブレードアンテナ。
それを見て、ロイガーは、
「ふむ……なかなか強いじゃないか。中級GOOクラスと言える魔力だ」
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