78話 時空ヶ丘に隠されたアイテム。

 78話 時空ヶ丘に隠されたアイテム。


「必死になって止めた! 頼むから無茶をするなと、拝み倒した! けど!」


 けれど、久剣一美は、

 トコの制止を無視して、戦場に飛び込んで、

 ――そして、死んだ。



「――どうせ生き残るなら、お前が生き残るべきやったやろ! お前が一番強かったんやから! ほんま、何、考えてんねん! くそばかがぁああ!」



 トコは、今にも泣きそうだが、

 しかし、涙だけは流すまいと、

 必死になって踏ん張っているように見えた。


「ええ加減にせぇよ! ええ加減にせぇよ! ええ加減にせぇよ、ぼけがぁあああああああああああ!!」


 全力で喚き散らすトコ。


「はぁ……はぁ……」


 数秒をかけ、息を整えてから、


「守って……やれんかった……必死になって……強くなったのに……」


 うなだれて、

 消えそうな声で、


「毎晩、毎晩、バカみたいに、時空ヶ丘を探索しまくって、アイテムを漁って……必死になって強くなったのに……何もできんまま、仲間が死んでいくのを眺めることしか出来んかった……それどころか、最後には……無様に気絶するだけ……ぐぅう……」


 トコの慟哭を聞いて、

 センは、


(……アイテム……)


 その部分が、強く気になった。


 だから、


「時空ヶ丘には、アイテムが隠されているのか?」


「……ぇ……ぁ、ぁあ……」


 トコは、奥歯をかみしめながら、

 どうにか表情を整えて、

 前を向き、


「携帯ドラゴンを強くする方法は二つある。『神話生物を倒して経験値をえる方法』と『時空ヶ丘に隠されとる強化パーツを使う方法』……」


「……ほう」


「強化パーツ以外にも、便利な回復アイテムだったり、魔法が封じ込められたカードだったり……とにかく、いろいろ隠されとる。神話生物が現れん夜は、みんなで、アイテムを探索する。それが、神話生物対策委員会の基本サイクルなんや」


「なんで、お前らだけで、それをやるんだ? 金の力をフルで使って、人海戦術をかければ――」


「携帯ドラゴンでサーチせな見つからんから、人海戦術は不可能」


「ああ……なるほど……」


「つまり、現状は、探索要員も足りてへんというワケや。戦力がゴッソリ減って、探索も人数不足でロクに出来んで、パーティには後衛しかおらんで、けど、昨日みたいに、ヤバいGOOが、空気を読まんと、容赦なく沸いてくる……テレビのRPGみたいに、こっちの戦力を計算して、ちょうどいいボスが現れてくれたらありがたいけど、現実は、ビックリするぐらい、バランス調整ミスりまくったクソゲー……ほんまに、ふざけ倒しとる……なにもかも……」


「……」


「冗談やないねん、ドレもコレも、何もかも。あたしも、ミレーも、マナミも、心底から、辟易しとんや。もう、ほんまに、辛いねん」


「……一人、抜けてねぇか?」


「ツミカは何にも考えてへん。アレは、ああいう生き物やから」


「……」


「あれだけ可愛がっとった『弟』が死んだ時でさえ、いつもとなんにも変わらんかった。葬式の日に『ネットの裏カジノで億単位を稼いだぁ』とかなんとか言うて、ご満悦やったわ。普通に『こいつマジでヤバいな』って思ったわ」

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