16話 次元の裂け目。


 16話 次元の裂け目。


 案内された場所は、

 第十七校舎の裏手。


 センの目には、何の変哲もない場所に見えるが、

 しかし、


 黒木の携帯ドラゴン『アポロ』が、

 目から、ペカーっとサーチライトを照らすと、


「……この『次元の裂け目』……なんか、でかいな……」


「そうですね……『ダンジョンにつながる次元の裂け目』は、これまでに、何度か見てきましたが……このサイズははじめてです……なんというか……不気味ですね……」


 などと、背後でつぶやいている黒木。

 センは、黒木に視線を向けることなく、


「黒木、お前はこなくていい。つぅか、くるな……お荷物はいらない」


 と、背中で語っていく。


「……」


 お荷物と言われて、普通にムっとした顔になる黒木。

 彼女は、茶柱ほどではないものの、

 しかし、まあまあプライドが高いので、


 センの背中を、なかなかの『女子力(ダークサイド)』で睨みつけて、


「確かに、戦闘面では、あなたの足元にも及びません。それは認めます。しかし、私は、もともとが、『後衛のメディック担当』であり、回復&サポートであれば、普通に『大きな戦力になれる』と自負しております。というわけで、お荷物と言ったことは取り消してください」


 張りのある声。

 ここは、あえて、『針のある声』と言ってもいいかもしれない。


 『イラっとした時の黒木』は、体温が2度ほど上がる。

 目が血走って、交感神経がブンブンと肩を回す。


 ――そこらの男子が『彼女の圧力』を受けた場合、

 ジャンピング土下座待ったなしだが、

 しかし、胆力が『人外の領域』に達しているセンは、

 むしろ、よりハリネズミな声音で、


「この裂け目の向こうには『一撃でもくらったらアウトの敵』がいる可能性が高い。一つ聞くが……お前は、ザ〇リクが使えるのか?」


「……いえ、死者蘇生の術は……会得しておりません」


「なら、邪魔だ。高次戦闘に『ホ〇ミ』は必要ない。正直『ベ〇マズン』も使えねぇ。つぅか、かりに『ザ〇リク』が使えたとしても、『お前を守る手間暇』を考えたら、そっちの方がダルい。というわけで、お前は帰れ。かえってください。お願いします」


「……死ぬ覚悟はできていませんが、しかし、ナメられっぱなしで終わるぐらいなら、根性見せて野垂死んでやる、という程度の意地はあります」


「……うわ、めんどくせぇ……」


 彼女の『めんどくささ』は、これまでの100ループの中で、

 ある程度、理解できたつもりだったが、

 しかし、所詮は『できたつもり』に過ぎなかった。


 『人のめんどくささ』には、いつだって、底がない。

 掴んだ気になっても、スルリと手から抜け落ちていく。


 特に、『根が複雑な女子』は、『単純な男子』と違い、

 状況次第で、『天使』にも、『獅子』にも、化けうる。


(……K5の中では、こいつと過ごした時間が一番多い。おおよそ『500日』……二年近く一緒にいた……それほど長く時間を過ごしたのに……俺は、こいつのことを、何もわかっていなかった……こいつは、方向性こそ違うが、トコや茶柱に匹敵するレベルでめんどくせぇ)


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