40話 彼女たちの実力。
40話 彼女たちの実力。
「無限将棋は、実力が拮抗した者同士で闘うと、決着まで数年以上を必要とする、莫大な根気が必須のゲームだが、実力差がある場合、こうして、一瞬でケリがつく」
コマの動きが煩雑かつ膨大であるため、
一瞬の見落としが即命取りにつながる。
「ほな、次、あたしがいこか……」
そう言いながら、盤の前に立つトコ。
トコの頭脳は紅院よりもはるかに上。
紅院もバカではないが、
しかし、トコの頭脳は、なかなか並外れている。
――だが、
「さっきのバカ女よりはマシだが、所詮は人間だな。詰みだ」
120秒ジャストで、バッサリと一刀両断。
紅院よりは奮闘した……それ以上でもそれ以下でもなかった。
「じゃあ、次は私がいきます」
学校のテストで測った場合、
トコも黒木も普通に1位で同列なのだが、
実際のところ、頭脳のランクは、黒木の方が、一つ上。
彼女は、ただ、知識をパンパンに詰め込んでいるだけの辞書女ではなく、
取り入れた情報を複雑かつ高度に応用できるブラックボックスとしても、
実は、それなりに高水準。
彼女の頭脳は、人類という枠の中で見た場合、
間違いなく最高峰に位置する――が、
「……さっきの女と大差ないな。詰みだ」
125秒でフィニッシュ。
黒木は、間違いなく、トコよりも優れた頭脳を持つが、
しかし、無限将棋という舞台での差は5秒でしかない。
最後に、茶柱が、
「ふふふ……ついに、ツミカさんの出番だにゃぁ。ここまで神秘のベールに包まれていたツミカさんの、すさまじいまでの実力が、ついに、明らかになる感じだにゃぁ」
そして、はじまった、
茶柱罪華VS覚醒ロイガーの一局。
茶柱は、常時、
「よぉわからんけど、たぶん、ここにゃ!」
という感じで、
1秒足りとも考えることなく、
はためには、テキトーに、
駒を乱舞させていく。
5秒という持ち時間を、
ロイガーは、一応、フルで活用しているが、
茶柱は、常時、ノータイムで、
「はい、ここにゃ! 知らんけど!」
という感じで打ち進めていく。
「どういうことだ? なぜ、ノータイムで守りの最善手が打てる?」
「え? 最善手だったのかにゃ? ツミカさんは、ずっと、テキトーにやっているだけなんだけど」
「……」
「こんなもん、どうせ、本気でやっても、勝てるわけないんだから、テキトーに、駒を動かしているだけにゃんだけど……へぇ、ツミカさんの豪運は、やっぱり、すごいにゃ。自分で自分に引いているにゃぁ」
「……ただの豪運だというのか……いや、確かに、考えて打っているようには見えないが……」
実際、考えて打っていなかった。
茶柱は、最初からゲームを捨てていた。
とはいえ、もちろん、
100%の脳死で打っているわけではない。
『守りの定石』を把握した上での無謀。
最低限、選択肢を絞った上で、
『どれが正解かを吟味する時間はないから、選択肢の中からテキトーに選ぶ』
というレベルの運任せ。
頭脳のレベルで言えば、
茶柱は、『黒木を置き去りにしている』というわけではない。
頭の回転速度で言えば、黒木とそこまで大差はない。
――ここに関していえば、茶柱がぬるいのではなく、
黒木が、ガチで異常種であるため。
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