67話 104。


 67話 104。


(質量保存システムの方は、あまりに強固すぎて、完全突破は、どうあがいてもできそうにないけど、アーカイブメモリの方につなげるだけなら、やり方次第で、不可能では……)


 頭の中で、山ほど計算しながら、

 どうにかこうにか、暗号を突破していくトウシ。


 あまりに膨大な計算量に、最初は戸惑っていたが、

 だんだん、慣れて、コツをつかんできたのか、

 コスモゾーンの暗号に対する解読力が徐々に上がってきている。


 結果、ありえない速度で、

 トウシは、質量保存システムの一部に侵入することができた。


(……見つけた……膨大な魂魄が保存されとる……このエネルギーとリンクさせれば……)


 そこから先も複雑な改変が必要となる。

 トウシは、世界をバグらせないように、

 丁寧に、丁寧に、

 己の魂魄処理機構にテコ入れを加えていく。


(……よし……あとは、数値を入力するだけ……)


 そこからも、手探り。

 トウシは、世界の可能性と向き合っていく。


(まずは2倍……)


 ためしに、自分の『経験値取得倍率』を2倍に引き上げてみた。

 何か、問題が起きないか、実行してみると、


(ん……問題なく稼働しとるな。2倍は楽勝。次は3倍……)


 楽しい実験の時間。

 バグが起きないよう、注意しつつ、

 トウシは、自分の可能性と向き合っていく。


(5倍も余裕か……じゃあ、次は10倍で試してみるか……)


 コスモゾーンのシステムは非常に強固だった。

 10倍どころか、100倍や、1000倍にしても、

 まったく動じない頑強さ。


(マジか……え、これ、どこまで上げられる感じ? すでに、10万倍まできてんねんけど……いや、10万倍やで? 仮に、今、ワシが、S級のGOOを倒した場合、S級GOOを10万匹殺した分の経験値が手に入るってこと? いや、エグいやん……一発で、アウターゴッドの領域に足を踏み込むことができるんとちゃう?)


 そんなことを考えている間も、

 トウシは、ガンガンに倍率を上げていく。


(え、これ、ほんまに、どこまで上がんの? ウソやろ? もう、100兆倍とかいう、小学生のギャグみたいな数字になってんねんけど……え、まだ、終わりやない……1000兆……え、まだいく? うわ、ついに、1京までいった……10京……20京……え、まだ? 50京……100京……104京……ん、あ、ここで終わりか……は、はは……マジか……イカれとんな……)


 最終的に、トウシの経験値倍率は、104京倍まで跳ね上がった。


(こんなん……スライム一匹倒しただけでもカンストするんとちゃう?)


 ありえない倍率に困惑するトウシ。

 異常すぎる数字に、最初は戸惑っていたが、


(これが、ほんまにマジやったとしたら……アウターゴッドを殺せるだけの力も、余裕で手に入る……)


 などと、思ったタイミングで、

 ちょうど、空の色が闇色に染まった。


 コンダクターの指示にしたがい、

 ホテルに戻っていく天才軍団を見送りつつ、

 トウシは、


(……おそらく、今夜、ワシは、神になる……)


 心の中で、ボソっと、そうつぶやいた。

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