31話 クトゥルフ・オメガバスティオンの半分。


 31話 クトゥルフ・オメガバスティオンの半分。


 膨れ上がった美しい光は、

 ある瞬間を境に、一点に収束し、



「……ぷはぁ」



 ――ヌルリと、

 神が、あらわれた。


 圧倒的力を持つ神――『インフィニットクルルー・ニャルカスタム』は、

 自身の敵である『センエース』に視線を向けて、


「……以前に戦った時よりも、ずいぶんとパワーアップしているな、センエース」


 などと、そんな言葉を放ちつつ、

 ゆっくりと近づいてくる。


「以前は神気を纏ってはいなかった。GOO程度の力しか持っていなかった。だが、今の貴様は、私の前に立つ資格がある」


 ゆらりとオーラを練り上げながら、


「さあ、やろうか。私の高みを教えてやる。心に刻め。私は、インフィニットクルルー・ニャルカスタム。最高位のアウターゴッド。私を超える神は、そうそういない」


「……クトゥルフ・オメガバスティオンの半分の力しか持っていないくせに、ずいぶんと高いところからモノを言ってくれるな」


「クトゥルフ・オメガバスティオンは突き抜けた存在だ。その半分に届いている私は、十分すぎるほど高みにある」


「……へぇ、そうなんだ。お前がヤバいというか、クトゥルフ・オメガバスティオンがヤバいな」


 などと、あえて呑気な返事を返しつつ、

 センは、ゆったりと武を構えて、


「くそったれなループを終わらせるためには、クトゥルフ・オメガバスティオンを殺す以外に方法がない。つまり、どういうことか。クトゥルフ・オメガバスティオンの半分程度の力しか持たないテメェごときに負けているようじゃ話にならないってことだ」


 目の前の前提を整理してから、


「殺してやるよ、クルルー。てめぇを超えて、クトゥルフを殺す。それで、このループを終わらせてやる」


「貴様ごときに私を殺せるかな?」


「できるかどうかは知らんけど、やるしかないから押し通す」


 言葉を使い切ってから、

 センは時空を駆け抜ける。


 出し惜しみはしない。

 最初からフルスロットル。


 すべての覚醒と変身を解放する。

 真・究極超神化プラチナム。

 超虹神気。

 眷属装備。

 図虚空。

 積み重ねてきた全てを解放して、

 存在値を限界まで底上げした上で、

 センは、クルルーに殴り掛かった。



「――閃拳っ!!」



 低ランクのアウターゴッドであれば、

 一撃で吹き飛ばすことも不可能ではない高次元の一撃。


 それを、クルルーは、片手であっさりと防いで、


「重たいな、センエース。貴様の拳は、いつだって重たい」


 認めた上で、


「しかし、まだまだ数値が足りない」


 切り返しの一撃は、

 センの脇腹に突き刺さる右フック。


「ぶへぇっ!!」


 体が、くの字に曲がって、血反吐が噴射される。


 たった一回の攻防だったが、センは理解した。


(あ、勝てんな)


 どちらの命の方が上にあるか。

 すぐに理解したセンは、隠しもっていた銀の鍵を使って、

 すぐさま、過去に逃げようとしたが、


「そう、慌てるなよ、センエース。もう少し、遊ぼうじゃないか」


 そう言いながら、クルルーは、胸の前で両手を合わせて、呪文を唱えた。

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