30話 インフィニットなカスタム。
30話 インフィニットなカスタム。
「……ん?」
強い気配を感じて、センは天を見上げた。
すると、空には、大きなジオメトリが刻まれていた。
――『空に刻まれたでっかい魔方陣』が視界に入ると同時、
センは、しっかりとした渋い顔を浮かべ、
「……えぇ? 普通のループに戻ったんじゃねぇのかよ……」
などと、つぶやいていると、
そこで、
センと肩がぶつかったテンプレヤンキー3号が、
「前回の余韻ってやつだね。ボクの魔力が、少しだけ自由に使えるっぽい。だから、出張してきてあげたんだよ」
ニコニコと微笑みながら、そんなことをつぶやく。
「……てめぇ……ニャルか?」
「違うよ。テンプレヤンキー3号だよ。ほら、免許証にもそう書いてあるだろう?」
などと言いながら、本当に『名前のところにテンプレヤンキー3号と書かれている運転免許証』を見せてくるテンプレヤンキー3号。
それをチラ見したセンは、
「……正式にそんな名前をしているヤツが、この世にいるわけねぇ。よって、てめぇはニャルの擬態だ。証明終了」
呆れ交じりにそう言いつつ、
ニャルを意識から外し、天を見上げる。
でっかいジオメトリを睨みつけ、
(何が出てくる……どんなウザいやつが……クルルー・ニャルカスタムなら、今の俺の実力があれば、どうとでもなるが……)
などと、心の中で思っていると、
「今の君に、クルルーをぶつけても意味はない」
当たり前のように、センの心を読んできたニャルが、
「ボクは、『戯(たわむ)れ』に『無意味なこと』もたくさんするけれど、君に対してだけは、そこそこ真摯に対応すると、結構な昔から決めている」
たんたんと、自分の流儀を口にしてから、
「というわけで、今回登場するのはクルルー・ニャルカスタムじゃない。もっともっとエゲつない宇宙的恐怖。その名も――インフィニットクルルー・ニャルカスタム」
「……」
「インフィニットクルルー・ニャルカスタムの強さは、なかなかえげつないよ。おおよそ、『クトゥルフ・オメガバスティオン』の半分ぐらいはあると思っていた方がいい」
「……『銀メダリスト級』の半分の力……か……」
苦々しい表情で、ボソっとつぶやくセン。
(最高級のアウターゴッドの半分……それは、今の俺にどうにかできるレベルなのか……)
冷や汗が流れた。
奥歯をギュっとかみしめる。
――そうこうしている間に、
空に刻まれたジオメトリの輝きが増していく。
膨れ上がった美しい光は、
ある瞬間を境に、一点に収束し、
「……ぷはぁ」
――ヌルリと、
神が、あらわれた。
これまでに見てきたクルルー・ニャルカスタムと、
見た目だけで言えば、そこまで大きな違いはない。
しかし、その存在感はまったくの別物だった。
(すげぇな……)
あまりに大きい存在感を放つ化け物を見て、
センは思わず後退りをしてしまった。
心がビビっている。
逃走を提案する無意識。
だが、同時に、もっと奥にいる無意識が、
『逃げるわけにはいかない』とも叫んでいる。
いつだってそう。
相反する二つの本音を心に飼いながら、
しんどすぎる板挟みの中で、
センは、運命と向き合い続ける。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます