32話 つまりは、因果論における確定収束上の特異点的な刹那関数のアレ。
32話 つまりは、因果論における確定収束上の特異点的な刹那関数のアレ。
「あんたに……僕の『全額』をベットする」
そう言いながら、
『茶柱祐樹の思念』は、
『センの手の中にあるナイフ』に手を伸ばし、
「がんばれ、センエース。あんたがナンバーワンだ」
「なんで、急にエリート王子のモノマネをはじめた? というか、タメ口やめろや、年下ぁ。ぶっ殺すぞ」
くだらないやり取りの直後、
茶柱祐樹の思念は、ナイフの中へと収束されていく。
コンマ数秒で、完全に一体となった茶柱祐樹とナイフ。
センは、『祐樹と一つになったナイフ』を見つめながら、
「身勝手なやっちゃなぁ……誰も了解してねぇぞ……」
軽く、グチをこぼしてから、
ほんの少しの間を開けて、
「……まあ、いいけど……」
などとつぶやいていると、
そこで、
ほったらかしにされていたウムルが、
「……尋常ではない『
と、当然の疑問を投げかけてきた。
センは、いったん、祐樹の事を頭から切り離し、
ウムルと真正面から対峙して、
「自分の教室。……あそこの校舎の二階なんだけど、分かるかな?」
後方にある『とある校舎』を指さしながら、
「あんたが、『チャバシラユウキの思念』を出した直後くらいから、なんか、ウチのクラスの付近から、『妙な気配』を感じてさぁ……それで、見に行ってみたら、これが、机に刺さっていたんだよ」
「……」
「ちなみに、あんたは何も感じなかった? あの妙な気配」
「いや、なにも……」
「あ、そう? ……茶柱、お前は?」
そう言いながら、ツミカに視線を向けると、
ツミカは、センの問いに答える気は一ミリもないようで、
「……なんで……」
『心底、意味が分からない』という顔で、
「……どうして……戻って……」
まっすぐに、センの目を見つめていた。
その疑念を受けて、
センは、
「なんで戻ってきたか? んー、ま、少なくとも、お前を助けにきたワケじゃないな。その勘違いだけはするなよ? そういう感じのソレじゃなくて、これは、いわゆる、そのぉ……ようするには、つまり、アレだ。因果論における確定収束上の特異点的な刹那関数の……そのー、ま、そういうことだ」
と『知能指数の低い返事』している途中、
ふいに、センの頭に電球が浮かび、
「そう! 簡単に言うと『このナイフの性能を試したくて戻ってきた』のだ! 俺は、新しいオモチャを手に入れたら、その日のうちに遊び倒さないと気が済まない『ヤンチャな気質』だからな! どうだ? 実に論理的だろう?! ひゅぅ!」
「……」
「というワケで、茶柱。お前はその辺で寝てろ。ここから先は俺の時間だ」
そう言いつつ、
視線をウムルにロックして、
「所詮はナイフを試すついで。つまりは、結果論にすぎないが……茶柱、今日だけは、お前のヒーローをやってやる」
まっすぐに、そう宣言してみせた。
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