39話 玉と棒をひねりつぶす。

 39話 玉と棒をひねりつぶす。


 トコは、一度、ボソっと、


「人の内側ってヤツは、ちょっと話しただけやとわからんもんやなぁ」


 などと、悲しそうにつぶやいてから、

 キっと、鬼のような目になって、


「しっかし、ほんま、ええ度胸しとるわ。これほどの勇者には、相応の褒美をあげなあかんなぁ。屈辱と辛酸と破滅と恐怖と苦痛と絶望と……あと、何をあげようかなぁ」


「あなた、バカですか? 美麗さんとトコさんを覗くなんて……この世で最も成功率の高い自殺行為ですよ」


「小腹がすいたにゃぁ。帰ったら、何を食べようかにゃぁ……」


「つ、罪華ちゃん、は、はやく体を隠してっ! なんで、そんな昼下がりのコーヒーブレイク中みたいな顔でボーっとしているの?!」



 ガンギレ薬宮。

 あきれる黒木。

 イカれた茶柱。

 狼狽する南雲。


 ワーワーと聞こえる女性陣の言葉を完全にシカトしているセン。

 目を閉じ、右手で頭を抱え、苦々しい顔で歯噛みしながら、ダンマリを決め込む。


 寡黙に固まったセンの頭の中では、


(さーって、どうすっかなぁ……こんなもん、言い訳の仕様がねぇんだよなぁ……『瞬間移動をしてきた瞬間』を見られていたなら、まだ、どうとでも出来たんだが……)


 センが転移した2秒後に、

 紅院たちは、センの気配(声)を察知して振り返っていた。


 つまりは、現状、

 『こっそりと忍び込んできた』

 と思われてもおかしくはない状況にある。


(……『バケモノからバシルーラくらいました』って言われて、信じるピュアガールが何人いるかって話なんだよなぁ……もし、俺が逆の立場だったら、『嘘つくならもっとまともな嘘をつくだろう……と思わせるタイプの大ウソだろう』と思うだろう。………………たまに思うけど、俺って、ちょっとだけ、多角的にめんどくせぇ性格してるな……)


 などと考えていると、

 そこで、紅院が、



「このノゾキ魔は、あたしが見張っておくから、あなた達は着替えてきて」



 リーダーらしく、テキパキと指示を出す。


 すると、南雲ナオが、

 心配そうに、


「ぇ、あの……一人で……大丈夫?」


 そう言ってきたのに対し、

 紅院は、ニっと笑って、


「言っておくけど、私がその気になったら、男子高校生が1000人束になってかかってきても瞬殺できる。……私の事は心配しなくていいから、さっさと着替えてきなさい」


 そこで、トコが、南雲の肩を押しながら、


「ミレーは、あたしらの中で一番強い。万が一にも、襲われることなんかありえん」


 そう言って、紅院以外の全員で、シャワールームから出ていった。


 バスタオル一枚で、しかし堂々としている紅院は、

 センに、


「さっきから、ずっと顔を背けているわね。『ノゾキをしていた』という前提さえなければ『なかなか気合の入ったジェントルマン』だと賞賛してしまうところだわ。ま、実際のところは、『バレてしまった以上、被害は最小限に抑えるべき』と判断して黙秘権を行使しているだけの『小賢しいクズ』でしかないけど」


 粘り気のある嫌味を前に置いてから、

 強い口調で、


「そのままシッカリと目を背けておくように。もし、少しでも、こっちを見ようとしたら、あんたの股間についている球と棒を、正式にひねりつぶすから、覚悟しなさい」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る