70話 お前こそ、真のキャバクラ無双よ。
70話 お前こそ、真のキャバクラ無双よ。
(探せばいるもんだな……『俺と似た人間』というのも……)
などと、センが心の中で、
無様な『ファントムトーク』に興じていると、
トコが、
「ま、ええわ。あんたが何者やろうと、結論に変わりはないから」
そう言いながら、
右手を差し出してきた。
握手を求められていると理解できないほど、
センの頭はラリっていないので、
「ん……んー」
とりあえず、求めに応じて、トコの手を握る。
小さくて、柔らかな手。
しっかりとした握手をしつつ、
センは、
「ぇと……反射的に掴んでしまったわけだが……これは、なんの握手だ?」
その質問に、
トコは、ニっと微笑み、
「ようこそ、神話生物対策委員会へ。新しいリーダーの誕生を、チームメンバー一同、心から歓迎するで」
「……リーダー?」
「もちろん、それだけやない。新リーダー兼、新エース兼、新特攻隊長兼、新遊撃隊長兼、新相談役兼、新ご意見番兼、新人類の救世主。それが、あんたのポジションや。ひゅぅ、かっこぃい。そんだけの肩書きがあったら、キャバクラで無双できるなぁ。よっ、大統領! あんたが大将!」
「……役職の量がエグすぎて溺れそう……」
いったん素直な感想を口にしてから、
「キャバクラで無双したくないんで、辞退させていただきます」
と、丁寧に御断りの言葉を並べるが、
しかし、トコは、そんな言葉を、右から左へ受け流し、
「それで、リーダー。今後のスケジュールについて、少し相談があるんやけど、ちょっと時間を貰(もろ)てエエかな? 全部、細かく決めていくとなると、たぶん、8時間くらい必要になると思うけど」
「勝手に話を進めるな。俺は『人の上に立てる器』じゃない。そういう資質は持ち合わせていないんだ」
「はは、ウケるぅ」
「なに、わろてんねん。一ミリもボケてねぇだろうが」
「リーダー、残念ながら、運命からは逃げられへんねんで」
「運命とは殺すものと見つけたり……というのが、俺の人生の答えでな」
「せやけどな、リーダー」
「まずは、リーダー呼ばわりからやめてみようか。そうすれば、きっと、新しい世界が広がってくれるはずだから」
などと『丁重な前』を置いてから、
丁寧に、丁寧に、
「大前提として、俺は常に孤高。徒党を組むのは、俺の人生論的にNG。組織とか、チームとか、ギルドとか、ラボメンとか、そういう概念は、俺の中に存在しない。ユーノウ? オーライ?」
「リーダーを心から慕うチームメンバーの一人として、正式に苦言を呈(てい)させてもらうけど、そんな『通るはずのないワガママ』ばかり言うてたらアカンよ。リーダーは、『あたしらの中心』として『人類の代表になる』と『誓った身』であり、また『世界に、それを認められ、求められたヒーロー』なんやから」
「ぇ、ちょ、待って……お前、何言ってんの? なんの話? 俺が『人類の代表になると誓った』って……は? え? あれ? もしかして、俺、寝ている間に、世界線を移動した?」
「なにを言うてんねん。昨日、あの土壇場で、ハッキリと宣言してたやないか。『ヒーロー見参』って、声高に」
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