15話 嫌われ方が甘い。
15話 嫌われ方が甘い。
「あまり時間をかけすぎるのはよろしくないな。俺は待たされるのが嫌いだ。軽んじられている気がしてイラつく。俺のことは、常に、最上位VIPとして扱うよう心掛けろ」
「ご安心を。30分以内に済ませます」
そう言うと、
黒木はスマホでどこかに電話しつつ、
紅院たちと一緒に、この場を去っていった。
紅院が最後にのこしていった『軽蔑するような目』が、センの脳に刻まれた。
完全に一人になったところで、
センは、泣きそうな顔になって、
「……よく頑張った、俺……痛みに耐えて、よく頑張った……感動した」
テンプレで自分を慰めながら、
自分の部屋へと戻る。
ベッドに寝転んで、
黙ったまま天を仰ぐ。
泣きたくなったが、涙は我慢した。
胸の奥がシクシクと軋む。
そんなセンに、
図虚空の中にいるヨグシャドーが、
(嫌われ方が足りないな。今の状況だと、経験値増加率は6000倍がいいところだ。話にならない。貴様のクズ役ぶりはコクとホップが足りない)
「あれだけ身を削ったってのに、まだ半分も嫌われる余地があるのかよ……あいつらの許容量、どうなってんだ? もしかして、あいつらって聖女なの?」
(貴様は、好かれるのも、嫌われるのも、いちいちハンパだ。根性が足りない。クズ男としての流儀がなっていない。だから、疑念を残す)
「俺で根性がないとなったら、この世に根性のあるやつなんていないと思うがねぇ」
★
――黒木たちがかえってから20分が経過したところで、
ピンポーンと、チャイムがなった。
センが、玄関をあけると、
そこには、
「はじめまして。わたくし、『五画寺(ごかくじ)歩姫(あるき)』と申します」
丁寧に頭を下げる。
和装の黒髪美人。
年齢は同じぐらいなのだが、
二十歳以上のお姉さんに見える貫禄があった。
(……おぉ、見事な大和撫子だな。まるで、大和撫子という概念の擬人化のようだ……すげぇな……)
「中に入ってもよろしいでしょうか?」
覚悟のきまった目でそう言う彼女に、
センは、
「あ、はい。どうぞ」
そう言いながら、中へと招き入れる。
自分の部屋まで案内したところで、
彼女をイスに座らせ、
「えっと……なんて聞いて、ここにきた感じ?」
そう問いかけると、
アルキは、
感情を失ったような顔で、
「一流娼婦の真似事をするようにと仰せつかっております。わたくしは、その道のプロではありませんので、あなた様を満足させることはできないと思いますが――」
と、そこまで聞いたところで、センは、
「あんたの顔を見ればわかる。えげつない覚悟を決めて、ここにきてくれたんだろうが……その覚悟を果たす必要はない」
「……どういう……意味でしょう?」
「あんたにやってほしいことは一つ。ここで、しばらく時間をつぶしてから、家に帰り、俺にムチャクチャされて穢されたと報告してもらいたい。それだけだ。あんたの評判に不名誉な傷が入ることになるが、我慢してもらいたい。申し訳ないとは思うが、こっちも、いろいろと、切羽詰まってギリギリなんだ。全人類の代わりに命を張って化け物と向き合っている俺に対する、せめても礼だと認識して、屈辱に耐えてもらいたい」
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