47話 命の格差。
47話 命の格差。
「……俺は……死ぬわけにはいかない……俺以外には、出来ないことがあるから……」
「傲慢だな、センエース」
「違うよ。これも、ただの事実だ。俺にしかできない。俺ぐらい狂っていないとできない」
「貴様は一般人ではないのか?」
「一般人が、極限まで狂っていちゃダメな理由でもあるのか?」
「極限まで狂っている者のことを一般人とは言わない」
「解釈の違いだな。この論争は永遠に平行線をたどるだろう」
そう言いながら、
センは、
「……さて……どうするかなぁ……いやぁ、絶対に無理なんだけどな……今の俺じゃあ、勝てるわけないんだよなぁ……どうするかなぁ……」
必死になって頭をまわす。
どうすれば、目の前の化け物をどうにかできるか、と、
真剣に考える。
どれだけ考えたところで、答えなど見つからないのだが、
しかし、それでも、センは考えるのをやめない。
「――今の貴様では、私に勝てないということは、誰よりも、貴様がよくわかっているはずだ」
「ああ、もちろん。自分でそう言ったしな。わかっているよ。勝てないよ。まともにやったら、一瞬で消される」
「それなのに……なぜ、武を構える?」
「構えている理由は『一応』だ。勝てるとは思っていない。ただ死ぬわけにはいかないという切羽詰まった事情もある。だから、全力であがく。この状況を打破するために、もがく。どれだけ苦しくても……どんなに真っ暗でも……」
「……ありえない気概だ。この状況下において、自暴自棄になり玉砕を覚悟するだけの者なら、そこまで珍しい気概でもないが、貴様は異常だ。貴様は、この状況を、誰よりも正しく理解していながら……その上で……私に勝つための方法を、本気で考えている」
自暴自棄になっているわけではない。
『勝てる』という妄想を抱いているわけではない。
『今の自分では絶対に勝てない』と理解した上で、
『それでも、現状を打破しよう』と、
頭が爆発するほど、必死になって考えている。
(どうすればいい? ……考えろ……どうする……)
センは賢くないが、バカではない。
だから、現状が正確に理解できている。
(……一回や二回の覚醒では、追いつけない……こいつと俺の間にある差は、ハンパじゃなく大きい。ドラゴンボールで言えば、クリ〇ンと魔人〇ウぐらいの差がある……)
絶望的な差だった。
信じられないぐらいの、えげつない差……
「この私の前で、ゆっくりと考えていられる時間など存在しない」
言葉が脳に届いた時には、
もう、
「どわぁっ……っ!」
センの両腕は空を舞っていた。
両腕を切断されて、バランスを崩したセンは、その場で一度フラつく。
すぐさま、魔力で止血しつつ、両の足でふんばる。
そんなセンに、
「これで、もう閃拳は使えない。貴様は主軸を失った」
感情のない声でそう言われたセンは、
キッと、ヨグを睨みつけ、
「……う、腕がなければ、殴れねぇとでも?」
と、『重たすぎる場の空気』を換えるためのテンプレを放つが、
ヨグの、
「腕が無ければ殴れないだろう」
という、あまりにも当たり前すぎる正論で潰される。
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