39話 第二アルファは頭がおかしい。


 39話 第二アルファは頭がおかしい。


「ふふん、青いな。あんたは、何も見えていない。ま、でも、予選が始まれば、すぐにわかるさ。俺という人間の、本当の恐ろしさが。――俺はヤバイ。何がどうとは言えないが、とにかくヤバい」


「……あ、そう……」


 中身のない会話をしていると、

 集まっている参加者たちの前に、

 武道大会のスタッフが出てきて、


「では、これより、軽く体力チェックをさせていただきます」


 そう言いながら、

 背後に魔方陣を出現させるスタッフ。



「では、まず、軽い準備運動として、50キロ走から始めます」



 などとふざけたことを口にしてから、

 スタッフは、パチンと指をならした。


 すると、ジオメトリが淡く輝きだす。

 その輝きが強くなるにつれて、


「ぶほぉ……」


 激しい疲労感に襲われるセン。

 その疲労感は、どんどん増していき、


「いや、きつい、きつい、きつい……え、何これ……」


 そんなセンの疑問に、

 筋骨隆々の男が、サラっと答える。


「運動した気になる魔法だな。運動したのと同じぐらい疲れはするが、運動効果は見られないという糞みたいなF魔法」


「ほんと、クソだな、おい! なんのために、そんな魔法が存在してんだ?!」


「そりゃ、こんな時のためだろ」


 涼しい顔で、サラっとそう言い捨てる『筋骨隆々の男』を横目に、

 センは、心底から『しんどそうな顔』で、


「え、ていうか、あんた、平気なの?! うそだろ?! このエグいしんどさの中、なんで、そんな、『昼下がりのティーブレイク中』みたいな顔ができるんだ?!」


「俺は愚連のC級武士だぞ。50キロぐらいは余裕でないと、話にならない」


「……C級……『C』ってのは……え、一番上? A・B・Cで上がっていって、Cが最強ってこと? そうだよね? そうとしか考えられないよね?! そうだと言ってくれないと、ちょっと困るというか、なんというか――」


「一番上はS級に決まっているだろう。S、A、B……で、C級だ。C級は、愚連の中だと、中間ぐらいの位置だな。人数だけで言うと、上の方なんだが、階級で見ると、ちょうど真ん中だ」


「……中間……」


 絶望の顔になるセン。

 しんどさの中、奥歯をかみしめつつ、


「……ちなみに……それぞれの階級には……何人ぐらいいる感じ?」


 そこで、『C級のマッチョ』は、

 センの顔をジっと見つめて、


「ああ、なるほど、お前、漂流者か……どこからきた?」


「……第一アルファ……」


「第一アルファ? ほんとうか? ……ほう……本当に存在するのか……どういうところなんだ? 魔法が使えない、みたいなことは聞いたことがあるが」


「質問……しているのは……俺だ……答えてくれよ……」


 どんどん強くなってくる疲労感に耐えながら、

 C級のマッチョに質問を投げかけるセン。


 ――Cマッチョは、どこまでも涼しげな表情のまま、つらつらと、


「『愚連S級武士』100人前後、

 『愚連A級武士』400人前後、

 『愚連B級武士』4500人前後、

 『愚連C級武士』2万人前後。俺は、その中のちょうど、真ん中ぐらいだ。で、

 『愚連D級武士』2万5千人前後、

 『愚連E級武士』が……確か……10万は行っていなかったと思うが……ここに関しては詳しい数字は知らん。頻繁に、やめたり、入ってきたりするからな」


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