34話 ハナクソ、ゲロカスを笑う。


 34話 ハナクソ、ゲロカスを笑う。


(この全知全能である私が、あの程度のカスを相手にするのに、対策など考える必要はない。よって、『知らん』という答え以外を持ち合わせてはいない)


(……ものすごいシッカリとした、例文のような矛盾だな……)


 深いタメ息をついていると、

 そこで、

 マイノグーラは、右手を地面に向けた。


 すると、右手の先に、直径二メートルほどのジオメトリが生成され、そのジオメトリから、翼の生えた犬が這い出てきた。


(あの……ヨグさん。あの犬は……なんですか?)


(あれは、カイザーウイングケルベロスだな。神だけが使える召喚獣の一つ。存在値は500億ぐらい。まあ、『カースソルジャー』や『量産型ソラル』と同じぐらいのザコ召喚獣だな)


(確か、俺の存在値が100億ぐらいって言っていたっけ? その五倍が……ザコ召喚獣?)


(あのランクの召喚獣は、デバフ散布効果にカスタムをかけて、山ほど召喚しない限り、使い物にならない。単体の召喚だとゴミ以下のゲロカスと言わざるをえない)


(ゴミ以下と言わざるを得ないゲロカスより遥かに弱い俺は、いったいなんなんだ?)


(ハナクソだな)


(……ゲロカスの方が、ハナクソより下だと思うんだが……)


(ハナクソがゲロカスを笑うとは、滑稽だな)


(……笑ってねぇよ。てか、笑えねぇよ)


 などと話していると、

 そこで、

 マイノグーラが、上空から、地上を指さして、

 カイザーウイングケルベロスに、何か指示を出す。


 カイザーウイングケルベロスは、コクリとうなずくと、

 歯をむき出しにして、地表で腰を抜かしている学生めがけて襲いかかった。






 ★






 時空ヶ丘学園は、中高一貫のマンモス校。

 敷地面積も巨大なので、人口密度事体はそれほどでもないのだが、

 体育などで複数のクラスが一緒に集まる時は、

 かなりの人口密度になる。


 現在、時空ヶ丘学園の南東部にある第五グラウンドでは、

 中等部の二年生、合計7クラスが合同で体育を行っており、

 その数は300人を超えている。


 体育の授業に勤しんでいた数百名の中学生たちは、

 突如、上空に現れたジオメトリに、目をまるくした。


 何が何だか分からず困惑している間に、

 そのジオメトリの中心から、謎の美女が這い出てきて、

 さらに、その美女が、翼をはやした犬を召喚したものだから、

 混乱は加速するばかりで、一向に落ち着きを取り戻してくれない。


 ただただ、ポカンと口を開けて、呆けたツラをしているばかりの中学生たちに、

 ジオメトリから這い出てきたショートカットの美女は、

 当たり前のように、『翼の生えた犬』をけしかけてきた。


 ――その事実を認識するやいなや、

 『比較的、根性のある中学生』は、即座に、悲鳴を上げて、その場から逃げ出し、

 さほど根性があるとも言えない者は、腰を抜かして、その場にペタンとすわりこむ。


 両者の間に巻き起こる結果に違いなど存在しない。

 バラバラに逃げようと走り出した根性のある中学生たちは、

 数メートルも走ったところで、見えない壁にぶつかって転倒してしまったから。



「な、なんだよ、これぇえええ!」

「か、かべぇ! 見えない壁がある!!」

「助けて、助けて、助けてぇええ!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る