24話 茶柱罪華の本音? いや、またそれも違う。
24話 茶柱罪華の本音? いや、またそれも違う。
「トコが死ななければ、外なる神が召喚され、世界は終わる」
「なぜ、そんな呪いをかけた?」
「世界に選択させたかった。彼女を殺すか、それとも世界を終わらせるか」
「それは結論であって、理由ではない。動機を聞いている」
「弟を殺された腹いせ」
「……ふむ、なるほど。筋は通っているな」
などとつぶやくウムルの向こうで、
センが、
「おいおい、ちょっと、待て。お前の弟は、病気で死んだんだろ?」
「トコの会社の『薬の出来』が悪かったから、あの子は死んだ。苦しんで、苦しんで、死んだ。会社の儲けのために、ウチの弟は実験台にされた。恨んで当然でしょ?」
「ん? いやいやいや、ん? 違うくない? なんか、違うくない? もともと死ぬ病気で、トコの会社が頑張って、いい薬をつくろうとして……でも、助からなかった、という、それだけの話じゃなかったか?」
「トコ側の視点では、そうなるのかもしれないわね」
「かもしれないって……」
「私の視点だと違う。結果論とはいえ、薬宮製薬は利益を出した。『延命した』と言えば聞こえはいいけど、実際のところは、苦しむ時間が増えただけ」
「……いや、それは、またニュアンスが違うような……」
そんなセンの言葉に対し、
茶柱は、フンと鼻で笑って、
「……ま、実際のところ、ただの八つ当たり。少なくとも、あの子が『重たい病気』になったのは、トコのせいじゃない。わかっている。……だから、結局のところは『自分の中で処理しきれなかった想い』を、トコにぶつけた……それだけ。わかってる。全部」
「……」
「ずっと、ずっと、死ぬほど痛かっただろうに……あの子は、私たちに心配させないように、いつも笑顔でい続けた……私は、幼いころから、あの子以外の『自己免疫疾患の患者』が、地獄の苦しみでのたうち回っているところを、何度も見てきた」
『免疫』は、体外から侵入してきたウイルスや細胞を殺す体内の機能。
しかし、たまに『バグ』って、自分自身の細胞を殺すようになる。
「政治の中枢にいると、あの子の病気みたいな『目を伏せたいところ』にも、シッカリと目を向けないといけないことがある。取材陣を引き連れて、闘病患者を訪問して、握手して回って、その様子を国民に見せつけて『いい人アピール』をする……別に、その行為を悪いとは思わないけど、個人的に、気色が悪いと思っていたのは事実……」
「……」
「政治家っていう仕事は、クズじゃないと出来ない。まともな人間が続けられる甘い仕事じゃない。蛇の道は蛇しか極められない」
「……」
「周りを見渡したら全員『ド級のクズ』……そういう世界で生きてきて、だから……あの子の純粋さが眩しかった。あの子の『心の強さ』に、変な嫉妬をすることもあった。あの子の純粋さを、ウザいと思ったことも何度もあるけど……けれど、どこかで、たぶん……救われていた。人間っていう生き物は、終わっているだけじゃなくて、美しいところもあるんだって、思えた……」
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