97話 道理。


 97話 道理。


「げへっ、ごほっ、げはっ……ぐ……せ、センエース……お前が普通じゃないことぐらいは……今の俺なら一目で分かる。お前が何者かは知らんが、ただごとじゃないエナジーを保有していることだけは、なんとなく分かる……」


 盛大に血を吐きながら、

 真っ赤なオーラをごうごうと燃やして、

 天童は、センを睨みつけ、


「……あいつを……ソルを殺さないと、全部が終わる……だから……一緒に戦ってくれ……」


 その大量の吐血を伴う『救援要請』に対し、

 センは、


「あいよー」


 片手をヒラヒラさせながら応えた。


「……ず、随分と軽いな……あいつは……ソルは、とんでもない化け物なんだぞ……」


「そんなもんは見れば分かるよ。アレは、今までに見てきたどれよりもエグい」


 そう言いながら、センは、武を構える。


「スーパーセンエースとどっちが強いか……その辺はちょっと不明だが、どっちの方が上か分からないと迷える程度には強そうだ……エグいねぇ……泣きたくなるぜ……すげぇ逃げたい……」


 グっと奥歯をかみしめて、


「それでも……叫び続けると決めてしまったから……やるしかないんだよなぁ」


 覚悟の確認を終えると、

 センは、空間を駆け抜けた。


 豪速に豪速を重ねて、

 ソルの死角を奪い取ろうと暴走。


 そんなセンに続く天童。

 セン以上の速度でソルの背後を奪い取ろうと全速。


 まずは、天童の剣が、ソルの後頭部をかすめた。

 当たり前のように、天童の一撃を回避したソルは、

 その後に迫りくるセンの拳を回避しつつ、

 超近距離で、センの全身をジっと観察しつつ、




「……異物……? なんだ、コレは……? ん?」




 首をかしげた。

 そして、全力で困惑している。


「私に知らない命などない……なのに、こんな命は知らない……貴様はなんだ? なぜ、魂魄の奥に、天童久寿男が少し混じっている? いや、混じっているというより、纏っている? 天童久寿男だけではない……平熱マンも……異守も、限村も、才藤も……なんだ、貴様は……どういう命だ?」


 何が何だか本当に分からないという顔で、

 ひたすらにセンを観察することに徹するソル。


 そんなソルに、センは、


「俺と殺し合っている時に、俺が誰かを探るなど、愚の骨頂ぉおお!!」


 速度をグンと上げて、

 拳にオーラと魔力をぶちこんで、


 加速して、加速して、暴走。


 その肉体と魂魄の全てでもって、

 センは、


「閃拳!!」


 積み重ねてきた必殺技を放った。


 愚直に、ただ愚直に積み重ねてきたセンの拳が、



「フルパレードゼタキャノン!!」



 天童の攻撃というサポートを受けて、

 ソルへと届く。


 天童の凶悪な照射の暴力を、反射で回避したソルの目の前。

 エゲつない火力の拳が迫る中で、

 ソルは、圧縮された時間の中に在った。


(――その気になれば、まだギリギリ回避できるが……なぜだろう、避けたくないと思ってしまうのは。……こいつは誰だ? このへちゃむくれは、一体誰だ? なぜ、私は、この目つきの悪いバカそうなガキに……天童以上の『主役性』を感じている? 意味が分からない。道理が通っていない)

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