14話 身勝手な裁断。

 14話 身勝手な裁断。


 ゾーヤが『センの命令』に黙って従ったのは、

 『全身がしびれた』から。


 ほかの者も、だいたいは同じ理由。

 『逆らうことは許されない』と、

 命の奥が認識したから。


 ――センは、全員が手を上げているのを確認すると、



「統治者の立場にありながら、『当たり前の痛み』を忘れたクソども。――罪の数え方を教えてやる」



 そう宣言してから、

 その場で、図虚空を横に薙(な)いで、



「――一閃――」


 そう宣言した直後、


 この場にいるセン以外の全員の利き手がスパっと切断された。



「「「ぎっ……ぁああああ!!」」」



 根性の足りない『半数の者』が悲鳴を上げたが、


 正義(まさよし)やゾーヤのような、

 『根性』が十分に足りている『残り半数』は、

 激痛に顔をゆがませながらも、

 どうにか奥歯をかみしめて、声を出すのは耐えた。


 その様子を見て、センは、



「さすが、大幹部連中は、声をあげもしないな。まあ、『60億人の頂点に立つ連中』なんだから、その程度の覚悟は決めておいてくれないと挨拶に困るが」



 そう言いながら、

 センは、

 いまだに激痛を口にしている連中に、


「血は出ないように、呪縛でフタをしたから、死ぬことはねぇ。沈痛機構にアクセスしたから、痛みも、言うほどじゃねぇだろ。これ以上、ピーピーわめくなら、首に『一閃』をぶち込むぞ」


 その脅しを受けて、

 喚いていた『半数』は、

 反射的に、残っている手で、自分の口を押さえた。

 まだ残っている激痛と恐怖を抑え込みながら、

 どうにか、声を出さないように自分を抑え込んでいる。


 場がシンと静まりかえったのを受けて、

 センは、満足げにうなずくと、


「呪縛でフタをしたから、血は出ないが、同時に、普通の手法だと『接着』させることもできねぇ。携帯ドラゴンの回復魔法を使えば余裕だが、俺が『許可』を出すまでは使わせない。仮に、茶柱罪華と黒木愛美が、お前らの頼みを聞いて『治癒魔法をかけた』としても、俺が『まだだ』と思ったら、普通にまた切り落とさせてもらう。俺が許可するまで、お前らは、永遠に片腕で過ごせ。――ちなみに『俺の意図』が伝わっていないバカがいるなら手をあげろ。そっちも切り落としてやるから」


 そこで、正義が、

 奥歯をかみしめつつ、


「間違いがないよう、一応、確認しておきたい。――『しばらくの間、社会的弱者として生活させる』ことで『我々の視点を変えようとしている』……その認識で合っているかな?」


「まあ、そういうことだ。映画で例えるなら、あれだな。トニー・スタ〇クが、拉致られ死にかけた事で、『パリピな死の商人』から『孤高のヒーロー』へと生き方を変えただろ? あんな感じだ。人間は、基本的に『アホな生き物』だから『痛みを伴わない反省』はしない。というわけで、痛みをしれ。弱さを刻みこめ。罪を数えろ。そこから始めろ」


 そこで、ゾーヤが、軽い冷や汗を出しているだけの『いつもと大差ない顔』で、


「その例えでいうと、君はトニーを拉致した『テロリスト』とイコールになるわけだけれど、それはいいのかしら?」


「俺は別にヒーローじゃない。テロ屋扱いしたかったら好きにしろ。否定はしねぇ。俺は俺の行動に責任を持つ。刑罰権に基づくことなく、私的な決断のみで『他者に制裁』を与えた俺は、法の上では、立派な犯罪者・テロリストだ」


「――どういわれようと、己の信念に従う。それが君の覚悟というわけね?」


「そうだ。俺は俺の信念と心中する。その結果、悲惨な末路をたどったとしても後悔……はするだろうが、しかし、『結論』は絶対に変えない」

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