83話 数字の暴力。


 83話 数字の暴力。


「思い知れよ、薄っぺらな化け物! 『本物の主人公』の背中は、仲間の魂魄を、永遠に鼓舞し続ける! ワシの背中が残っている限り、ワシらは負けんよ! そして、主役(ワシ)は負けないと相場が決まっている! ワシらに勝てると思うなよ、三下ぁ!」



 あらがいつづける三人を尻目に、

 センは、ボソっと、


「――いい目だ……どいつもこいつも。オメガどもとは、やはり格がちがう。お前らは強い」


 そこで、しかし、言葉をかえし、


「だが、俺には勝てねぇよ。なぜなら、本物の主役は俺だから。てめぇらに主役の素養があるのは認めるが、しかし、『本当の本物』の前では、さすがにかすむ! 今が、スピンオフ時空だったら、ちょいとヤバかった可能性がなきにしもあらずだけどなぁあ! ははははははははははははぁ!」


 バカみたいに笑いながら、

 センは、三人との闘いに終止符を打つ。


 それまでのような『様子をうかがいつつの上昇率』ではなく、

 かなり強めにアクセルを吹かせて、

 出力を一気に加速させると、


 ――『カンツの中心』に、激烈な一撃を叩き込む。


「ぐふぅううっっ!!」


 イカれたダメージ量を誇る一撃を受けて、

 体を『くの字』に曲げるカンツ。


 血走った白目をむいているカンツに、

 センは、ニィと笑みを向けて、


「――『大けがを受けても、次のコマでは何事もなかったかのように元通り』という、ギャグ漫画で定番の『ありえない自己治癒速度』……てめぇの『特質』は確かに笑えるが、しかし、俺の前では、『笑える』という以上の何かじゃねぇ。お前をはるかに超える『俺という異質』で、てめぇのギャグを殺してやるよ」


 そう言いながら、

 センは、カンツの中心に、

 何度も、何度も、重たい一撃を叩き込んでいく。


 その途中で、

 アクバートとアストロギアが邪魔しにきたが、

 しかし、彼らの攻撃は、軽く受け流す程度にとどめ、

 カンツに対する処理に神経を没頭させる。


 その途中で、センは、アクバートとアストロギアに、


「アクバート・ニジック・J・ヤクー! アストロギア・ハザード! てめぇらも、もちろん、強いし、重いが、絶対的に数値が足りてねぇ。俺の異質は、常識の向こう側にある! 数値も技術も、規格外! それが俺だ! こんにちはぁ!」


 ヒラヒラと、二人の攻撃を回避しつつ、

 カンツの中心に、芯を喰った猛攻を叩き込み続ける。


 すでに、『100回死んでいてもおかしくないほどのダメージ』を受けているが、しかし、カンツは、それでも、



「がははははははぁああ!! まだだ! まだ終わらんぞ!!」



 歯を食いしばって笑う。

 楽しくて笑っているのではない。

 『どれだけ苦しい時でも不敵に笑って見せる』という、

 そんな『鋼の覚悟』を、

 必死になって保ち続けているだけ。


 『中心』に対してフルボッコを決めているというのに、

 なかなか足元が揺らがないカンツに対し、

 センの『深部』は、


「……カンツ……俺はお前を認めたね」


 意識のギアを、もう一つ上げていく。


「てめぇの強さの『根源』は、その『笑える特質』なんかじゃねぇ。そんなものなくたって、お前は十分に強いよ」

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