82話 『ギャグ漫画補正』と『主人公補正』のぶつかり合い。


 82話 『ギャグ漫画補正』と『主人公補正』のぶつかり合い。


「がははは! ワシの一斉掃射をモロにくらっておきながら、ほとんどダメージなしか! 震えさせてくれるじゃないか!」


 ピンピンした状態で、

 豪快に笑っているカンツに、

 センは、


「……そっちも、ほとんどノーダメに見えるんだが、これは気のせいか?」


「がはは! いや、気のせいではない。あの程度の火力で、ワシを殺すのは不可能というだけの話。まあ、正味の話、自分の攻撃だから、本当は、『あの程度の火力』などとは言いたくないがな、がはははははは!」


「……さっきの掃射のダメージを受けていないだけじゃなく、直前に、俺が貫いた胸部も、すっかりもとに戻っているんだが……これは、さすがに気のせいだよな? 俺の目にも、だいぶ疲れが出てきた……そういう認識でいいんだよな?」


「どうしてもそう思いたければ、好きにすればいい! しかし、現実は、いつだって、常に非情! どれだけ大ダメージを受けようと、次のコマに移れば、なかったことになる。それが、ワシのプラチナスペシャル、ギャグ漫画補正!」


「……なにそれ、チートすぎん? 無敵じゃん」


「がはは! 何度も言わせるなよ、クソガキ! ワシは無敵! 誰もワシを止められん!」


 そう叫びながら、

 カンツは、両手に銃器を召喚すると、


「さあ、いくぞ! ワシらの闘いは、これからだ!」




 ★




 ――カンツとの闘いの中で、

 センは気づいた。

 カンツのプラチナスペシャル『ギャグ漫画補正』が、

 『自分の特質』と、『方向性だけ』は似通っているということが。


 ゆえに、センは、


「――『ギャグ漫画補正』か……だいたい、見えてきたぞ、お前の特質」


「がはは! ワシのプラチナスペシャルを理解できる者などおらんよ! このスペシャルと長年向き合ってきたワシですら、さっぱり、理解が出来んのだから!」


「向き合い方がたりねぇんだよ。俺には、お前の特質が、少しだけ理解できる。なんせ、俺も、それに似たものを持っているからな」


「ほう! 興味深いな! 貴様は、どんなプラチナスペシャルをもっているという?!」


「――『主人公補正』。この世でもっとも最強の看板。シリアスモードで闘えば、さすがのア〇レちゃんも、カ〇ロットには勝てねぇさ」


「そこまで堂々と、『己こそが主役だ』と名乗れる、その気概だけはあっぱれ! しかしなぁ! 『その補正』なら、ワシにもついとる!!」


 そう叫ぶと同時だった。



 ――さきほど吹っ飛ばしたはずのアストロギアとアクバートが、

 センの背後から、襲い掛かってきた。



 ズタボロの姿で、息も絶え絶えだが、

 強い光の灯った瞳で、まっすぐにセンを睨みつけている。


 ――寸でのところで、彼らの攻撃を回避したセンに、

 カンツが、


「思い知れよ、薄っぺらな化け物! 『本物の主人公』の背中は、仲間の魂魄を、永遠に鼓舞し続ける! ワシの背中が残っている限り、ワシらは負けんよ! そして、主役(ワシ)は負けないと相場が決まっている! ワシらに勝てると思うなよ、三下ぁ!」

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