52話 たかが3回程度の覚醒で、アウターゴッドに勝てるとでも?


 52話 たかが3回程度の覚醒で、アウターゴッドに勝てるとでも?



「認めよう。人の王よ。貴様は強い」



 マイノグーラを包んでいるオーラが充実していく。

 魔力がジックリと煮詰まっていく。

 激しい炎のように、

 けれど、どこか、静かな水面のように。


 複雑かつ立体的な、

 神の輝きでもって、

 マイノグーラは、センの前に立つ。


 それを見て、センは、普通にドン引きしながら、


「大きいな、マイノグーラ。その覇気だけで、ペシャンコになりそうだ。勘弁してほしいぜ」


 そう言いながら、

 センは、あらためて武を構え、


「この場から逃げだしてぇ。すべての責任を放り出してぇ」


「それは、本音だな。なのに、なぜ、そうしない?」


「バカだからだろ……多分な」


 そう言うと、

 センは、瞬間移動でマイノグーラとの距離を詰めた。


 神虹気の補正を受けたことで、センのステータスは跳ね上がったが、

 しかし、まだまだ、センの『数字』は、マイノグーラの遥か後方に在る。


 ゆえに、センのムーブは、

 マイノグーラの目に、ハッキリと見えている。


「遅いのだが……遅いと感じさせない……やはり、貴様の戦闘力は破格だ。とても人とは思えない」


 そう言いながら、

 軽やかに、センの攻撃をかわしていく。


 簡単にかわしているわけではない。

 冷静に対処しなければダメージを負ってしまうし、

 愚鈍な回避では追撃をくらう可能性もあるので、

 極めてかろやかに、正確に対応している。


 そんな、マイノグーラの対応に対し、センは、


(スキがねぇ……追撃をいれたら、即死級のカウンターをくらってしまう)


 歯ぎしりしながら、追撃を諦め距離をとる。


 二手目に悩んだ一瞬のスキ。

 そのコンマ数秒の中で、マイノグーラは、




「オーラドール・アバターラ」




 八体に分身してみせた。

 その行動に対し、センは目を丸くして、


「どうぇぇええええ?!」


 奇声を上げるだけの装置に成り下がる。


 そんなセンに、マイノグーラは、

 たんたんと、


「私のアバターラは、戦闘力が低い。あくまでも、手数を増やすだけ。しかし、ソレを『自覚して運用している』ということは念頭に置いておいた方がいい」


 宣言通り、マイノグーラのアバターラは、

 戦闘力的には酷いものだった。


 とはいえ、数値的には、センの視点だと、一体一体が地獄級。


 『手数を増やすためのオプション』として、丁寧に運用されると、

 その弾幕ぶりに対して、今のセンが、

 『完全な対応をとること』は非常に難しい。



(このニセモノどもを、さばくことは可能……だが、相手の目的が、『分身をさばかせること』である以上、さばけたからといって、こっちのアドバンテージにはなりえねぇ……)



 実際、アバターラの相手をしているスキをつかれて、

 何度か、マイノグーラの攻撃が、センの体をかすめている。


 ギリギリのところで回避しているものの、

 集中力を限界まで高めたこの状態を、

 いつまで維持できるものかと、不安になってくる。


(これだけ、覚醒して、覚醒して、覚醒して……それでも、俺はまだ、相手になってねぇ……いい加減にしてほしいぜ、ほんと、マジでぇ)


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