3話 究極超凡人センエースの面倒くささ。

 3話 究極超凡人センエースの面倒くささ。


 薬宮トコは、基本的に『男』を信用していない。

 アゲセンと紅院正義の二人に関しては、

 『特別』と認識しているものの、

 しかし、『全面的信頼』はおけない。


 ――特に、紅院正義は『立場』上、どうしても、

 『特異的功利主義志向』を捨てられないから、

 ギリギリ信用は出来ても、直球の信頼は出来ない。


 特異的功利主義志向の根幹を一言で言えば、

 ――紅院正義は、『自分』が助かるためなら、

 『娘の命』をベットすることも可能な人間である――

 ということ。


 この辺に関して、正義は、『ごまかしていない』ので、

 その分、トコは、彼を信用しているわけだが、

 同時に、トコの中で、『それが人間の本質である』という、

 『シッカリとした土台のある諦観』を形成してしまった。


 もろもろの理由があって、彼女は、

 『利益なしに動く男はいないだろう』

 と、決めつけてかかり、

 結果的に、先ほどのような、

 『とにかく報酬を吊り上げる』

 という、ゴリ押し戦法をとることとなった。


 ようするに、一言で言えば、

 彼女は『リアリスト』が過ぎた。

 薬宮トコは、ロマンチックを求めない。

 彼女は『白馬に乗った王子様』を信じない。


 ゆえに、トコは、センエースのような、

 『合理的に考えて、俺がやるしかないだろう。ごちゃごちゃと前提を積む必要性など皆無。これは、きわめて単純な話。――やるしかねぇなら、やってやる。できるかどうかはどうでもいい。そんだけ』

 という、バカ丸出しの『尖った思考』をする男もこの世の中には存在する、

 ということが理解できていない。


 ――センエースは、基本的に、

 『利益(儲けにつながるか否か)』ではなく、

 『合理(道理にかなっているか否か)』で動く。


 それも、『社会的合理(マクロな視点での正当性)』ではなく、

 彼の『中』にしかない『固有的本質的合理(自分がウザいと思うか否か)』を求めて動く。


 しかし、だからこそ、ゆえに、


(過剰に持ち上げられるのはゴメンだ……なにが『王の中の王』だ……そんなもんになって、俺に、なんのメリットがある……俺以外のヤツには、多少、メリット的なものもあるのかもしれんが、俺目線だとゴリゴリに皆無)


 どこまでも、いつまでも、めんどくさい男、

 それがセンエース。

 どんな状況に陥ろうと、決して変わることのない、

 彼の絶対的イデオロギー(観念形態)。



 ――心の中で、ブツブツと、めんどくさい言葉を並べつつ、

 ようやく門をくぐり、紅院家の敷地の外に出ると、


 そこで、




「にゃははー、こんにちはー」




 と、笑顔で気さくに声をかけられた。

 声の主は、変態美少女、


「………………こんにちは」


 とりあえず、挨拶を返したセンに、

 彼女――茶柱罪華は、


「こんなところで会うなんて奇遇だにゃぁ」


「いや、奇遇もクソも……俺がGOOとの戦闘後に気絶して、紅院の家で寝ていたことは、さすがに、お前も知ってるはず――」


「あー、もしかして、ツミカさんのことを待ち伏せてしていたのかにゃぁ? ストーカーさんなのかにゃぁ? キモい人なのかにゃぁ?」


「……」

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