53話 実にくだらない対話。

 53話 実にくだらない対話。


「普通に極論って感じがするかなぁ」


 と、センは、本音の前を置いてから、


「どんな言葉でつくろっても、茶柱が相当のキ〇ガイだってことに変わりはない。俺の中だと、あいつは、性悪クソ女だよ。少なくとも、清廉ではないし、高潔でもない。……凛々しい……まあ、そういう部分がないワケでも、ないだろうが……でも、確実に、優しくはない。どっちかっていったら、最低の性悪女――」


 と、そこで、

 城西は、ガツンと、

 右ストレートを、センの左頬に叩き込んだ。


「ちゃんと警告したはずだ。俺の前で、彼女の悪口を言うな、と」


「いったぁ……」


 純粋に『痛み』を口にするセン。

 正直、よけようと思えばよけられたのだが、

 センはあえて、城西の拳を顔面で受け止めた。

 それは、センの意地であり、プライド。

 もっと言えば、センの『名状しがたい厄介なところ』である。


 城西は、


「彼女と仲良くしているところを見せつけられる、こちらの心の方が痛い」


 などと言ってから、

 グイっと、センの胸倉をつかみ、


「俺は、彼女にふさわしい男になるため、必死になって努力してきた。何もしていない『無能のお前』が、彼女の隣にいる姿を見るのは耐えられない。彼女と、お前が付き合っているというのが、本当か嘘か、どっちでもいいが、とにかく、別れると言え。今後、彼女とかかわらないと誓え」


 強い口調で、そう言われて、

 しかし、センは、わずかも怯むことなく、

 むしろ、ギンッと目力を強くして、


「俺の、あいつに対する評価って、悪口とかじゃなくて、事実だろ? 仮に、俺が、あいつに対して、ブスとか、頭悪いとか……あとは、なんだろうな……ビッチとか、万引きの常習犯とか、そういう嘘八百を口にしたなら、殴られても、文句を言えないけど、俺が言ったのは、全部、ただの現実だろうが。あいつは、性格が悪い! これは悪口じゃねぇ! ただの事実だ!」


「……黙れよ……お前が、彼女の何を知っている?」


「現実から目をそらしているお前よりは、まだ、あいつについて詳しい自信があるな。城西、言っておくが、お前の発言は、アレだぞ。『アイドルはウンコしない』とか、そういう系の気持ち悪さに匹敵するアレだからな」


「一緒にするな。彼女は、家族を大事にする優しい女の子だ。大好きだった弟をなくして、心を痛めて、それなのに、笑顔いっぱいで……必死に強がっている……そういう、強くて優しい女の子だ」


「それだって、表面だな。『表面2層目』って感じかな。あいつは、仮面を何枚もかぶることで、自分を守っている」


「……知った風な口をきくなよ」


「何度も言わせるな。事実を言っているんだ。ありのままの事実を並べるのに、知った風もクソもねぇ」


 決して折れることなく、

 まっすぐに言葉を並べ続けるセン。

 その態度を受けて、

 城西は、怪訝な顔になる。


「……一つ聞きたいんだが……閃、お前は、彼女の何がよくて付き合っているんだ?」


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