15話 300人委員会が壊れていく。


 15話 300人委員会が壊れていく。


 センエースは完全な教祖となった。

 もちろん、中には、センエースのことを『対エイリアン用の最終決戦兵器』としてしか見ない者も、いないことはないが、しかし、大半の者は、センエースのことを神格化させて、崇め、奉るようになった。


 センエースという御旗(みはた)は『金になる』と理解した商売人たちが、

 こぞって、センエース関連の『宗教アイテム』を作成しビジネスをはじめる。

 銅像や人形を、お守りとして売り出す――というのから始まり、タオルやコップなど、『ありとあらゆるセンエースグッズが制作される』というキャラクタービジネスが横行。

 中には『センエースのサイン』を販売する者もいた。

 もちろん、ニセモノなのだが、

 『センエースのサイン』をもっていると、これまでに犯した罪が許され、天国に行ける。

 などと、嘘八百を並べ立て、センエース信者から金を巻き上げる大型詐欺集団も発生した。


 ――もちろん、その手のクソ犯罪集団は、300人委員会によってフルボッコにされた。


 怒り狂ったゾーヤの鉄拳が、首謀者の顔面を陥没させた。


「貴様だって陛下に救われたのだぞ。命を削って人類すべての盾になってくださった陛下の威光で詐欺行為を働くなど……なんという大罪。貴様は人間ではない。ただの害虫だ。生きている価値はない」


 センエースの高潔さに、より深く陶酔したゾーヤは、

 300人委員会をそれまで以上にまとめ上げ、

 センエースを崇拝するためだけのキ〇ガイ組織へと変貌させていった。


 元々は、裏から、丁寧に300人委員会を操っていた彼女だが、

 タガが外れたのか、悠長に暗躍などすることなく、

 主戦場の最前線にたって、センエース教の布教特攻隊長を務めた。


 最初手である『センエースの情報をメディアに流した』という段階から、

 すでに、彼女はセンに狂っていたが、

 しかし、イブとの死闘を経て、彼女はさらに、

 センエースという概念に溺れることになる。

 もはや、なかなか息もできないほどの溺愛と泥酔。



 彼女の目には、センエースという稀代のヒーローしか見えていない。



 彼女の中では、センエースだけが全て。

 センエースの意思が、彼女の意志。

 センエースの望みが、彼女の望み。


 その意図を、鼻息荒く、センエースに伝えたゾーヤ。

 あなただけが世界の全てであり、私の全てなのです。

 彼女の想いを理解したセンは、深くうなずきながら、


「では、ゾーヤよ。まず、情報を統制して、俺を中心とした宗教を禁止してくれ。なんか、各地で、俺教が出来ているが、俺は、教えを説く気は微塵もない。別に、悟ってはいないし、神の子でもない。何度も、何度でも言うが、俺は人類を救う気はない。俺は俺のやりたいことをやるだけだ。――というか、そもそも、宗教は嫌いなんだよ。俺と関係ないところでは、勝手に自由にやってくれていいんだけど、俺は巻き込まないでくれ。キリストとか仏陀とか、そういう、昔ながらの歴史あるアイドル様を称えてもらいたい。俺に挿げ替えようとしないでくれ。頼むから」


 そんなセンの願いを、ゾーヤは、


「ははっ」


 と、ゆるい一笑で切り捨てる。

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