61話 殺してもいい?

 61話 殺してもいい?


「その辺はちゃんと区別しておくべきだと思うぞ」


 そこで、センは、薬宮トコに視線を向けて、


「な、そこは、お前的にもそうだろ?」


「……ど、どうでもええわ……そんなこと……マジで……」


 本当に、心底どうでもよさそうに、

 そうつぶやいたトコに、

 センは、


「まあ、状況が状況だからな。そういう点に関して、どうでもよくなる気持ちはよく分かるんだが、けれど、俺は、そういうところを大事にしておきたい妙なタチなんでね。メンドくさくて悪いね」


 などと、無意味な言葉を並べて揃えてから、

 ロイガーに視線を向けて、


「というわけで、ロイガー、お前の提案は、根本からズレている。仮に、俺が、薬宮を殺したとしても、お前が期待するような『胸クソ展開』にはならない。もし、どうしても『そういう提案』がしたいのであれば、俺ではなく、紅院か、黒木にするべきだ。……あ、ちなみに、茶柱に提案するのは、やめておいた方がいいかもしれない。あいつも、どっちかと言えば、俺寄りな気がする」


 などと、たんたんと語るセンに対し、

 ロイガーが、いぶかしげな顔で、


「貴様、異様に冷静だが……状況が分かっていないのか?」


「いや、わかっているよ。わかっているからこそ、キッチリしておきたい。わかる? この感じ」


「まったくわからん」


「あ、そ。まあ、別にいいけどね。わかってほしいとは思っていないから」


 そう言ってから、

 センは、 トコに視線を向けて、


「ちなみに、どうする? 仮に、さっきの話を素直に受け入れた場合、どうやら、俺は、『お前を殺したら助かる』みたいなんだけど。……殺してもいい?」


「……どんな質問してんねん」


「いや、こういうところは、ちゃんと整理しておいた方が、そっちとしても話を進めやすいだろ? もう、なんだか、いろいろ、しっちゃかめっちゃかになっちゃっているし」


「……ま、それはそうやけど」


「というわけで、俺の質問に答えろよ。その結果をもとにして、また、ロイガーさんに、次の提案を出してもらおうぜ」


 などと、微妙にフワフワしたことを口にするセン。


 トコは、数秒考えてから、

 ロイガーに視線を向けて、


「……ほんまに、閃があたしを殺したら、閃のことを見逃すんか?」


 そう問われたロイガーは、


「ああ、私の名に懸けて誓おう。これは盟約。私の魂魄に刻む約束」


「……ちなみに、ロイガー。あんたは、ここで、あたしを殺して、どうするんや? その勢いのまま、世界を終わらせるっていうんやったら、それは『閃を見逃す』とはならへんで」


「そうだなぁ……貴様らを殺した後は、元の場所に帰るために、この星の全てを生贄にしようかとも考えていたが……私的には、別に『どうしても人類を滅ぼしたい』とは思っていないから……貴様らを殺したあとは、テキトーに、魔力の高い惑星か恒星を生贄にして、退散させてもらうことにしよう。私が帰ったあとで、好戦的なGOOが召喚され、結果的に、人類が滅ぶという可能性はあるが、そんなものは、私のあずかり知らぬところ」


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